男の子たちのハートをガッチリつかんで放さない、魅惑の乗りもの・電車。
線路沿いに陣取って、電車が通り過ぎるのをいつまでもジーッと見続ける様子や、電車の識別番号まですべて覚えてしまうわが子の姿に、「どうしてここまで…」とあきれながらもひそかに感動しているママも少なくないのではないでしょうか…。
そんな電車大好きっ子にピッタリの、電車の魅力をたっぷり伝える絵本ができました!
その名も『いちばんでんしゃの しゃしょうさん』。どうやら大人も喜んでしまう内容になっているとのうわさ。
絵を描かれた、大友康夫(おおともやすお)さんにお話を伺うため、一番電車…は無理なので、何十番目かの中央線に乗って(笑)、ご自宅にお伺いしました。
- いちばんでんしゃの しゃしょうさん
- 作:たけむら せんじ
- 絵:おおとも やすお
- 出版社:福音館書店
一番電車の車掌さんは前の夜から泊まり込みます。乗務前夜から、早朝の出勤、小さなハプニングをひとつずつ解決して、一番電車の乗務終了までを詳細に描きます。
●元JR東日本の車掌さんが書いたはじめての絵本!
─── この絵本を見た時に、最初にそのタイトルが気になりました。「"いちばんでんしゃ"って何?」って。
そうしたら本当にJR中央線三鷹駅から朝一番(4時32分!)に出発する電車の話で、ビックリ(笑)。
読んでみると、車掌さんの起床方法や発車ベルのタイミング、駅への到着時間まで本当に細かく詳しく書いてあって、ぐんぐん引き込まれていって…。
プロフィールを見たら、文章を書かれた竹村さんは元車掌さんだったって書いてあって…。二度ビックリしました。
もともと、僕と今回文章を書いた竹村氏は10年以上前に出会ったんですよ。その時は彼が車掌をしているなんて知らなくて、随分とガラの悪い感じに見えたから(笑)、知り合いになりたくないなぁ…って思ってたんです。でもその時にいたのが海外の、ホテルが1つしかないような小さな島で、ご飯とかも宿泊客みんなで食べなきゃいけなくて。運悪く竹村氏と隣り合わせになっちゃって、「イヤだなぁ…」って思ったんだけど、話してみたら汽車の話とかものすごく面白かった(笑)。
それからずーっと友達で。でも、まさか一緒に仕事をすることになるなんて、全然考えていなかったんです。
─── それは何とも…不思議な出会いだったんですね。それから十何年も経って絵本を作ることになることも、とっても不思議。そもそも、絵本のお話はどういった経緯で誕生したのでしょうか?
竹村氏が会社を早期退職してからしばらくたって、僕のところに自費出版した本を送ってきたんです。それがすごく面白くて「もしかしたら絵本の文章もかけるかも・・・」と思って持ちかけたんです。「電車の話を書いてみないか」って。それからまたしばらくして、第一稿ができました。自動起床装置が出てきた場面で「あ、やっぱり間違っていなかった。これは絵本になる」って思いました。それから、担当編集者もふくめて、たっぷり時間をかけてこの絵本の文章が完成しました。
─── この自動起床装置、すごいですよね!「いつもこうやって起きてるんだ!」ってうちの息子もすごく反応していました。うちにもこれがあったら寝坊しないのにって思っちゃいますね(笑)。
それから「しゃしょうのもちもの」っていうのもすごく細かくて、これを真似して紙で作って、かばんの中に入れる子なんかもいそうだなぁって思いました。
やっぱり実際に働いていた人間が書くから、すごくリアルなんだよね。
代々木−千駄ヶ谷駅間の大きなカーブとか、東京駅での急なのぼり坂とか、乗客として乗っているだけでは分からないことが随所にちりばめられているから、子どもにとってはすごく新鮮だと思うんだ。東京駅に入る上り坂なんて、注意して聞いてみると「ウーーーーーーン」って音を出しているくらい急なんだけど、竹村氏の文章を読むまで、僕自身、気にしたことなんてなかったから…。
次に中央線に乗った時、「あ、ここで運転士さんと交代するんだよね」とか「今きっと体操しているよ」とか…(笑)。親子で話してくれると嬉しいよね。
竹村氏が忠実に車掌の日常を文章で書いてくれたから、そこを絵でしっかり受け取って表現しなきゃって気持ちになったんだよ。