北海道の豊かで厳しい自然の中、懸命に生き抜く動物や植物の姿を、力強くも美しい版画で描き、日本のみならず世界からも高い評価を受けている作家手島圭三郎さん。その圧倒的な存在感を放つ手島さんの絵本作品の数々、一度は目にした事のある方も多いのではないでしょうか。
この度、「いきるよろこび」シリーズ(絵本塾出版)の最新刊『とびだせにひきのこぐま』が4月に発売となった手島さんにお話をお伺いすることができました。新作のみどころを始め、これまでの作品についても沢山の質問をさせて頂きました!
- とびだせにひきのこぐま
- 著:手島 圭三郎
- 出版社:絵本塾出版
くまの子どもは冬ごもりの穴で生まれます。長く厳しい北海道の冬の間、暖かく静かな穴の中で大きくなり、春、暖かくなると穴から出てきます。こぐまは、自由に動ける広い世界がうれしくてたまりません。きつね、しか、うさぎなど見るもの全てが初めてで面白くて、その動物たちのまねをして遊びます。それを見守る、母ぐまもしあわせな気持ちでいっぱいです。
●最新作『とびだせにひきのこぐま』のテーマは・・・?
─── 「いきるよろこび」シリーズの最新刊『とびだせにひきのこぐま』は、冬ごもりを終えたくまの親子を通して、どんなことを描かれているのでしょうか?
穴の中で生まれたこぐまがはじめに外へ出て感じるおどろきとよろこびです。
好奇心とエネルギーのかたまりのようなこぐまの姿はこれから生きていく世界への希望にあふれた姿であり、
それを見守る母ぐまのこぐまへの愛情にあふれた姿、
それをつつみこむ春が来た北国の野山の美しさを描いています。
─── 後ろから見守る母ぐまの姿は、こぐまへの大きな愛情が感じられて、読んでいて優しい気持ちになってきますね。
この「いきるよろこび」シリーズは、他の作品の緊張感漂う動物達の佇まいに比べると、全体的に穏やかな雰囲気を感じます。テーマについて教えていただけますか。
私が70才の年令になってはじめた生命賛歌(「いきるよろこび」シリーズ)は 作者が老人だからできる発想のものというねらいがあります。生きてやがては死をむかえる生きものの定めの中で生きること。そのすばらしさを老人の体験を通すような気持で表現しています。
『とびだせにひきのこぐま』はシリーズ4冊目で、既刊の3冊(1冊は「みずならのいのち」リブリオ出版刊)が「老い」をテーマとしているので、今回は誕生のよろこびをテーマとしました。