孤独なスリの男が、逃げこんだ袋小路で、「わたしの空をこわさないで」と声をかけられます。 見上げるとおんぼろアパートから顔をのぞかせる少女がいました。「空」は、ただの小さな水たまり。でもたしかに、とびきり上等の夕焼けがうつっています。 「わたしだけのヒミツの空よ。すずめやおほしさまがこっそりあそびにくるの。木の葉のおふねは空をとぶのよ」
少女はお母さんと二人暮らし。5歳のとき、夜おそくまで働きに出ているお母さんをさがして階段から落ち、それがもとで歩けなくなりました。だから、できるのは、アパートの窓からほんの少し身を乗り出して外を眺めるだけ。 顔に刀傷のある男は、かわいらしい少女を怖がらせまいと、傷を隠そうとしますが、少女は傷を見つけて「あなた、しあわせの王子さまだわ」と喜びます。 少女がたいせつにしている絵本の話を聞いた男。なぜ自分が王子なのか不思議に思いながら、あの子の“しあわせの王子”になろうと、まっとうに働いたお金で少女のもとへ通いますが、ついにある日、またぬすみに手をだしてしまって……。
歌手であり俳優の高英男氏が1980年に演じた、ミュージカルから生まれた絵本。 脚本家の山崎陽子さんはオスカー・ワイルドの有名な童話『幸福の王子』を下敷きにしつつ、水たまりにさえ幸せを見つけることができる少女と、孤独なスリを描きあたらしいお話世界をつくりだしています。 安井淡さんの絵は、本書のためにヨーロッパの裏町をスケッチしたそうで、ひとむかし前のうらぶれたヨーロッパの街をあざやかに彷彿とさせます。 ひとつひとつの場面のうつりかわり、せりふまわし。声にだして読むとそのすばらしさがじわっと伝わってくるでしょう。スリの語りですすむ地の文章は、圧巻です。 一途で不器用な愛情が切なく胸に迫る『水たまりの王子さま』。名作絵本の復刊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
おいらはスリ。ある時、路地裏の窓辺で女の子に出会った。おいらのことを、絵本の「しあわせの王子さま」にそっくりだって……。30年前に、ミュージカルをもとに作られた名作絵本です。「どんな境遇にあっても、人は誰かを幸せにできるということ」「人と人の出会いのかけがえのなさ」に改めて気づかせてくれるストーリーです。
表紙を見て、こうふくのおうじさま?と思い手に取り、次にタイトルが気になり読んでみました。
「こうふくのおうじ」の絵本を大切にしている少女とスリの男の心の交流の物語。
スリは彼女のこうふくのおうじになれるのでしょうか。
スリの男の語りも良かったです。
絵本ですが、幼児では難しいと思います。 (みちんさんさん 30代・ママ 女の子4歳、女の子2歳)
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