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ぼくはオバケなんかこわくない。ともだちみんながこわがるそうこに、ぼくはひとりではいった。するとそこには…。岩井志麻子と寺門孝之が導く、妖しく美しい世界。
いつもみんなと一緒に遊んでいただけの、普通の少年が、ちょっとしたことをきっかけにして、異界へ迷い込んでいく話。
この絵本は、ある男の人生の、最初の「つまづき」を描いているような気がして(全くの個人的妄想です)、続きが気になってしまう。少年は、仲間の前で格好つけたかっただけだったのに、その事がきっかけとなり、学校の倉庫にいた魔物を連れてきてしまう。そんなことは思いもよらななかっただろうが、人生はそんな風に、ちょっとしたことで思わぬ方向へ転落していく事もある…と深読みして、怖くなった。
文章自体は、どのようにでも受け取れる書き方をしているので、音だけで聴いたらあまり怖くない気がする。しかし、絵が強烈で、絵でトラウマになりそうな勢いだ。水彩画の溶けそうな淡い色合いで、幽霊や魔物、人間の恐怖などのおぞましい感情を遺憾なく表してある。お化けは、こういう世界に、水気の多い世界にいるのだろうと、納得できる作風が秀逸だ。
生々しい、生活感あふれる現代怪談だ。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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