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いつでもどこでも、時間を問わず、 寝っころがってでも、床に座ってでも、お母さんの膝の上でも読めるのが絵本。 でも、この本だけは、一番お気に入りの椅子に座って読んでほしい…。 そんな絵本が誕生しました。
ページをめくると、薄いトレーシングペーパーから浮かび上がる椅子のシルエット。 それだけで、この絵本がそっと静かに、私たちに読んでほしいと思っていることが 伝わってきます。
絵本の中に登場するのは、 見つめあう画家の夫婦、うつむいたままのバレエダンサー、 ジッと前を見据えるバッターにボクサー…。 人々の生活のワンシーンを切り取った絵には、短い詩が添えられています。 不規則で、断続的なようなページの中で、 ただ、共通しているアイテムが「椅子」なのです。
今まで「座る」以外の用途を考えもしなかった「椅子」が この絵本を読んだ後には、辛いことも楽しいこともそっと受け止めてくれるような、 とても趣のある存在に見えてきます。
大勢に知られてしまうのがどこかもったいない、 私と椅子と絵本だけをそっと大切にしまっておきたくなるような作品です。
(木村春子 絵本ナビライター)
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画家は立てかけたキャンバスに向かって、ピアニストはステージのピアノの前に、コックはキッチンのニスのはげた腰掛に、おばあさんは籐椅子に座って一日一日を送ります。「ぼくたちには座る椅子が用意されている。しあわせの分量もかなしみの分量もきまっているんだ」。人間を温かい目で見つめ、「椅子」になぞらえて絵と文で綴った絵本。
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