将来、ともだちになるかもしれない、だれかの毎日。 世界36か国の子どもたちのくらしを写真家たちが撮りおろした写真絵本「世界のともだち」シリーズ。 第25巻は、インドネシアに暮らしているともだちです。
インドネシアは、1万3千以上の島々からなる東南アジアの国。 10歳の女の子マン・アユが住んでいるのはその中の緑豊かなバリ島、世界から観光客が多く訪れるウブドという村です。 家族はお父さん、お母さん、おばあちゃん、中学生のお姉さん、そして2頭の犬。 学校が終わったら週2回、塾に通い、かわいいキャラクターのぬいぐるみが好きなマン・アユ。 お年頃のお姉さんは、スマホでともだちとのやり取りに夢中です。 なんだか日本の同い年の女の子たちと、あんまり変わらないみたい…? そんな暮らしのなかで、大きく違うことがあります。 それはバリ島の多くの人びとが、ヒンドゥー教を熱心に信仰していること。 子ども達の一日のはじまりは、まずお祈りから。 家、学校、街。いつでもどこでも人々はきれいな花をあしらった「チャナン」を供え、神様に感謝をささげます。
そんなバリでは、踊りが、宗教儀式やおまつりの一部。 マン・アユも、若い頃にバリの伝統的な踊り子だったお母さんから受け継いで、小さい頃から踊りをはじめ、 近所のお寺でおこなわれる舞踊ショーでダンスを披露しています。 マン・アユの夢は、立派な踊り子になることなのです。
丸く大きな黒目が輝く瞳、ひっつめた長くストレートな黒髪。 真っ直ぐにカメラを見つめるマン・アユの微笑みは、太陽のようなまぶしさとともに、そこはかとない神々しささえ放っているようです。 「あっ、この子だ!」 王宮の跡地で踊りのレッスンを受ける子どもたちを撮影していた写真家・石川梵さんは、彼女をひと目見てピンときたといいます。 最初の印象どおり、目や額にお化粧をし、伝統的な衣装をまとううちに、ごく普通の女の子から、ゆっくとり踊り子へ変身していくマン・アユ。 闇の中でライトに照らされながら舞う姿は妖しささえ漂う美しさ、思わず息を飲むほどです。
つつましく温かく、信仰に熱いバリ島の女の子とその家族。 巻末のあらましでは、インドネシアの地理や気候、歴史や産業についても紹介されています。 25人目の「世界のともだち」が住む国を、日本の子ども達は遠く感じるのでしょうか?それとも…?
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
1万3千以上の島々からなる国、インドネシア。マン・アユは、緑ゆたかなバリ島、ウブドでくらしています。夢は、りっぱなバリ舞踊の踊り子になること。週に2回、観光客向けのショーで踊るすがたは、まるで別人のようです。観光地としても有名な祝祭の島、バリ。信仰とともに生きる人びとのすがたをおいかけます。
インドネシアのバリ島で、伝統的な踊りを習う少女とその一家の日常生活。イスラム教の多いインドネシアでは珍しいバリ・ヒンドゥー教の文化圏で、伝統的なお祭りや儀式をしっかり継承している。
大人も子どもも舞踊や音楽の練習をするのが普通で、自然な形で昔のものが残っている。その一方で学校生活や日常の暮らしは現代的。
明るく、極彩色に溢れた清々しい雰囲気。熱帯特有の生命力にあふれた人々の暮らしが刺激的な一冊。
目が大きく、表現力が豊かで将来を期待されている少女。普段のしぐさも可愛らしいが、舞台に上がると妖艶さを漂わせる。観光客向けのショーで踊るプロの踊り子としての矜持も感じさせるが、屈託ない笑顔はまだまだあどけない。
いろんな部分で二面性を感じさせる写真絵本。日常と非日常を行き来する生活が興味深い。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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