神社で遊んでいた少年たちの一人、ケンジは、夕暮れ時に不思議なものを見つけ鞄にしまった。 それは、ヤツデの葉っぱのうちわ。 夜にまた河原で花火をしようと約束した少年たちは、いったんそれぞれのうちへ帰った。 しばらくして日がとっぷり暮れた暗い道を、約束の時間に遅れて、ケンジが走って行く。 神社の角をまがったとき「あっ!」ケンジは立ちすくんだ。
道のまんなかで、提灯お化けがしゃべった。 「あなた、もしや大天狗さまのうちわを、お持ちではないですか?」 はっとしたケンジは思わずこういった。 「そ、それ……、い、いまから、か、返しにいくんです」 引き返せない言い訳を口にしてしまったケンジは、妖怪たちに案内され、神社の森の奥に入って行く……。
モノクロの大判絵本のなか、たしかな闇の存在感で浮かび上がる妖怪たちに引きつけられます。 巻末の妖怪一覧を見ると、道でケンジを待ち構えていた妖怪のひとり、オオカミの姿をしたものは「狗賓(ぐひん)」、終盤とつぜん落ちてくる全身長い髪でおおわれた巨大な顔は「おとろし」だとわかります。 次々あらわれる大小の妖怪の名前と存在を知ることに奇妙な喜びが生まれます。
ケンジが暗い夜の森に入り、大天狗に会い、鳥居を出るまでのお話。 大天狗に見守られているような不思議な安心感とともに、ずるいことをしたら森や境内のどこかから、何かが手をのばしてくるかもしれないという緊張感のせめぎあいにドキドキが止まりません。
作者の大野隆介さんは、本書がはじめての絵本出版。 妖怪の一本一本の毛、大天狗の白髪など、鉛筆の線が冴え渡ります。 黒々とした木立や星空の美しさも見どころ。 不思議なモノクロームの空間で、数えきれないほどの妖怪の姿をお楽しみください。 闇のなかの闇、絵本のなかでしか、なかなか会えない世界が広がっていますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
神社の敷地で遊ぶ子どもたち。一人の少年が、境内の脇で不思議な物を見つけ鞄にしまった。その日の夜、河原で花火をするために少年が再び神社の前を通りかかった時、落とし物を返してくれと妖怪が現れた! 逢魔が時の境内は、妖怪たちが闊歩する時間。少年は、見たこともない不思議な世界を体験する。
夜の神社で、少年は様々な妖怪に遭遇します。全ページ、鉛筆を駆使したモノクロの世界で表現されており、一見おどろおどろしくみえますが、どことなく滑稽で、また不思議な美しさを漂わせています。
作者は、グラフィックデザイナーの大野隆介氏。絵本を中心に、これまで数々の書籍の装丁やデザインを手がけてきました。本書は、「作家」としての初めての作品です。
神社で遊ぶ子どもたち。一人の少年が、不思議な物を見つけ鞄にしまった。その夜、少年が再び神社の前を通りかかった時、落とし物を返してほしいと妖怪が現れた。少年は、見たこともない不思議な世界を体験し…。
一人で妖怪たちに言われて神社に行くなんて!
わが子は
「ぜ〜〜〜ったい 無理!!!」
と言っていました。
神社で不思議なものをみつけて、何気に持ち帰って
しまったことによって不思議な体験をするストーリーです。
モノトーンの絵本、魑魅魍魎、百鬼夜行?!
私はかなり好みの絵本ですが、子供はちょっと......
と少し怖がりました。
「あっ」から始まる物語、最後も「あっ」で終わります。
そこはちょっとクスリとしました。
少年の一夜の物語、高学年向けかもしれませんね。 (そよかぜはなさん 40代・ママ )
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