数多い名作の中から、誰もが共感できる12の作品をセレクトした「ひきだしのなかの名作」シリーズ。 第3弾は、「オズのまほうつかい」です。
原典に忠実な再話文を木坂涼さんが、絵を繊細なタッチで独特の世界観を表現する朝倉めぐみさんが描いています。
アメリカのカンザスに住む女の子ドロシーは、ある日竜巻に襲われ、家ごと吹き飛ばされてしまいます。 家に帰りたいドロシーは、「オズの国」へ行くと叶えてもらえると聞き、かかし、ブリキの木こり、ライオンと、オズを目指して旅をします。
この作品が生まれたのは、1900年。今から百十数年前のことです。 出版されるやいなや、たちまち子どもたちの心を捉え、空前の人気作品になったそうです。
「オズのまほうつかい」というと、真っ先に有名な曲「Over The Rainbow」が思い浮かぶ人も多いのでは。それだけ、本よりも映画の印象が強い作品ですが、この絵本は原作に忠実に再話されています。 例えば、映画の影響で、ドロシーの履いている魔法の靴は「ルビー色」というイメージがありますが、原作では「銀色」となっており、この絵本の中でも銀色で描かれています。
シリーズを監修した、昭和女子大名誉教授で児童文学者の西本鶏介さんが、巻末で、こう書かれています。
― この空想物語のすばらしさは、主人公が王子さまや王女さまではなく、ドロシーという平凡で身近な女の子であり、不思議な国へ行くのに特別な手段を必要としないことです。(中略)物語の舞台が、いかにもアメリカ的な風土色にあふれ、大草原を開拓したヤンキーたちの心意気がドロシーたちの旅を通して、たくみに象徴されています。―
カンザスに行ったことがなくても、家が飛ぶほどの竜巻が起こる気候風土と、田園風景の中にポツンとある小さな家という舞台背景が、他のドイツやイギリスの児童文学とは違う、大地の広大さを感じることができます。 悪い魔女にひるむことなく立ち向かう、ドロシーと仲間たちの勇気とフロンティア精神を、絵本で改めて読み返してみてください。
(福田亜紀子 元絵本編集者)
竜巻でとばされたドロシーと愛犬トトは、故郷のカンザスへ帰るため、オズの国をめざす。1900年に刊行され、アメリカでシリーズ1000万部を売り上げたフランク・ボームの原作を絵本化。
「オズのまほうつかい」のおはなしは、自分も小さい頃から大好きでした。知恵と思いやりと勇気を感じることができ、個性あふれるキャラクターたちにとても魅力があるからです。
もちろん完訳版も良いですが、ダイジェスト版でも十分その面白さが分かるので、絵本もいろんなタイプがたくさん出ているのだと思います。
こちらは、文章もイラストも日本の作家さんが担当されているので、とても読みやすいと思います。おしゃれなイラストで大人も楽しめました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子17歳、男の子14歳)
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