古典作品をヒントにしてあらたに執筆されたアンソロジー、「古典から生まれた新しい物語」シリーズ。 『第三の子ども』と題された今作は、怖い話の短編集です……。
仙人さんと呼ばれるホームレスの老人が、ひとりの青年から暴力をふるわれているところにでくわした主人公。 なんとかその夜のことを忘れようとする主人公だが、不運にも青年と再会してしまい…… 「仙人さん」
まるで初めからいなかったかのように、人の存在そのものを消し去ることのできる黒い消しゴム。 それを手に入れた少女は、邪魔者を消していくうちに狂気にとりつかれてゆく―― 「マクベスの消しゴム」
ピアノのレッスンを休むために、ウソを重ねていく少年。 ピアノさえやめることができたなら! その一心でウソをつきつづけてきたはずなのに…… 「さよならピアノ」
三人の子どもを産んだとされる、古事記のコノハナサクヤヒメ。 ひとりは海を治め、ひとりは山を治め、しかし、古事記にその後の記述がない三人目の子どもは、いったいどうしたのか。 隠された神話に触れたとき、少女はみずからの血脈の秘密を知る―― 「第三の子ども」
心がざわざわ……なんとも居心地の悪い読後感の四編。 オバケもの、怪談ものではなく、摩訶不思議な出来事の恐怖を描いた物語です。 なーんだ、オバケが出ないんならへっちゃらだぞ、なんて油断してると……ぞくっ! 人の心のありようが、やっぱりいちばんおそろしい……。
巻末の解説では、それぞれの元になった作品についてそれが収録されている書籍が紹介されています。 合わせて読むことでまた違った味わいで再読できる、二度もおいしいホラー集。 古典文学に触れるきっかけとしてもおすすめの一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
古典をモチーフにした4つの物語を収録。恐怖をテーマにしたそれぞれの作品の最後に著者メッセージ、巻末に古典への読書案内を掲載した。
この本の中には4つの物語が書かれています。
「仙人さん」(令丈ヒロ子)
「マクベスの消しゴム」(藤真知子)
「さよならピアノ」(吉野真理子)
「第三の子ども(表題作)」(阿刀田高)
1つ1つ完結で30ページくらいで終わるので、読むのが苦手なお子さんでもわりと読みやすいと思います。
タイトルに“こわい話”と入っているように、ベースは有名な古典文学からもらっていますが、平成(時代)の世の中に置き換えて描かれているので、
それぞれイメージしやすい世界が広がっていますし、夏になるとなぜかこわい話は読んでみたくなる(人が多いと思う)ので、そういう時にぜひ手に取ってもらいたい1冊です。
個人的には「仙人さん」が面白かったです。
あとがきには「古典の扉」と銘打って、児童文学協会の宮川健郎さんがこの本の説明を簡単にしてくれています。
描く物語がどの個展をベースに作られたかがわかるので、興味を持った人はぜひ、古典文学の方も読んでほしいです。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子22歳、女の子17歳)
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