いなくなって気が付くのは、君のかけがえのなさ。 太くて長いしっぽも、りっぱなひげも、うしろすがたも、みどりの瞳も…… すべてが愛おしい。
強い瞳が印象的な少女が想いをはせるのは、いつでもそばにいたはずの彼女の猫。今はもういないけれど、何をしていても、どんな時間でも、その感触やにおい、姿や声まではっきりと思い出せる。そして、そんな彼女の想いの向こう側に見えてくる猫の姿は、初めて見るであろう読者の目にも、とても魅力的。二人の時間がどれだけ蜜月の関係だったかが伝わってきます。
作者は言葉遊びの名手であり、愛猫家としても知られている石津ちひろさん。彼女の亡き飼い猫に対する思いが込められている言葉は、切実でありながら、短い言葉のひとつひとつから体温を感じるよう。その愛情と悲しみの詰まった感情を「少女と猫」の絵として表現してくれているのは宇野亜喜良さん。それぞれが凛としていながら、一緒にいる時の甘い関係が美しく象徴的に描かれます。
そして驚かされるのは、別れを経験したすべての人の心にしみいってくる最後の場面。「わたしからあの子」への想いの言葉がこんな形で表現されるとは。「きみからわたし」のもとにこんな形で言葉が届くとは。一語一語を大切にしている石津さんならではのしかけ遊びになっているのです。個人的な感情でありながら、すべての人の心に深く訴えかけてくる、心に響く一冊です。カバーを外した時の装丁もお見逃しなく…。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
あのねこの、においも、なきごえも、すべてがいとおしい…。ことばあそびの名手であり愛猫家で知られる詩人・石津ちひろがうたいあげる、亡きねこへの思い。
最後に文字数の言葉遊びだととわかるのですが、いなくなったねこに対する思い、その存在感が見事に語られていて唸ってしまいました。
言葉が少ない分、宇野亞喜良さんの絵が存分に楽しめるのも魅力的です。
猫好き作家のコラボレーションの素晴らしさだと思います。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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