おばあちゃんとプールに行った帰り道、地下鉄に乗ってきたのは……マーメイド! の姿をしたお姉さんたち。その美しさに見とれるジュリアンは、自分も空想の中で人魚の姿になって自由に泳ぎ回るのです。そして家に着くなりおばあちゃんに言うのです。
「あのね、おばあちゃん。ぼくもマーメイドなんだ」
何も言わないおばあちゃん。だけどおばあちゃんがシャワーを浴びている間、ジュリアンはいいことを思いつきます。植木の草花で頭を飾り、口紅を塗って、レースのカーテンを身にまとって。ほら、ここにいるのは間違いなく素敵なマーメイド! だけど、その姿を見たおばあちゃんはやっぱり何も言わない。がっかりさせちゃったのかな。
いえいえ、そんなことありません。おばあちゃんはジュリアンにネックレスをプレゼントし、あるところへ連れて行ってくれたのです。そこは……。
ニューヨークのコニーアイランドで毎年行われるパレードが舞台となっているこのお話。主人公の男の子ジュリアンが自分の中の本当の気持ちに気づく繊細なテーマを扱いながらも、この絵本の大きな魅力はしっとりとした雰囲気の中で色彩豊かに描かれた美しい絵。マーメイドに扮するお姉さんたちもさることながら、空想の中で魚たちと共に優雅に泳ぐジュリアン少年の姿には心底うっとりしてしまうのです。そこにはジェンダーを越えた憧れがあり、誰もが抱いたことのある気持ちが描き出されます。
「きれいだなあ」
読者が持つであろうその共感こそが、この絵本の一番大事なポイントなのかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
表情豊かな美しい絵で描かれた 人魚になりたかったぼく、ジュリアンの物語
おばあちゃんと行ったプールの帰り道、ジュリアン少年は地下鉄に乗っていました。人魚が大好きなジュリアンは、おしゃれな人魚の格好をしている女性3人に見とれて、おばあちゃんに打ちあけます。「ぼく、人魚なんだ」。たちまちジュリアンは想像の世界へ入りこみ、人魚になりました! おばあちゃんに声をかけられ想像の世界からもどったものの、ジュリアンは家に帰るなり身近な物をつかって人魚に変身して満足します。けれど、おばあちゃんには不評のようで、ジュリアンはがっかり。「ぼく、人魚の格好をしちゃいけないのかな……?」 ところが、人魚の姿のまま外へ出ようとおばあちゃんに誘われ、おっかなびっくり出かけてみると、さきほど見かけた人魚姿のお姉さんたちをはじめ、海の生き物に扮した色鮮やかな人たちのパレードが!そこでジュリアンは……。
ボローニャ・ラガッツィ賞(伊)、ストーン・ウォール賞大賞(米)受賞作品。
図書館の新刊コーナーで見つけました。
とても綺麗な挿絵の絵本です。
マーメイド姿のお姉さんたちに憧れる少年、ジュリアン。
マーメイドになりたいと、カーテンをまとって、変装します。
それをみたおばあちゃんは、ジュリアンを外に連れ出すのでした。
LGBTをテーマにした絵本とのことでしたが、あまり気にせず、物語として楽しめました。
大げさにするのではなく、淡々と、男の子の夢を見守るおばあちゃんの姿が素敵です。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子11歳)
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