
おれには、お母さんがふたりいる。ひとりは今のお母ちゃん。赤ちゃんのときから育ててくれているお母さんだ。もうひとりは、生んでくれたお母さん。おれは、生まれてすぐ、特別養子縁組っていうので、うちの子になった──。 主人公は、小学4年生の結。姉と父、母とともにみかん農家の家で毎日を楽しくくらしている。姉の香も母がふたり。ふたりとも特別養子縁組でいまの家族の一員になった子どもなのだ。このことは地域の人たちも知っていて、かくすことなく暮らしている。 ある日、結の担任の先生が「二分の一成人式で読む手紙を書きましょう」と。家族への感謝と将来の夢を書くのだという。同じクラスの友だちに「結はみかん農家をつぐための養子だろ」といわれ、転校生のあかねに「結くんは〈フコウナオイタチ〉でかわいそうだけどがんばってるね」といわれ……。「おれは、そういう理由でこの家にきたのか? 〈フコウナオイタチ〉なのか?」 そして、姉の香がクラスの男子をなぐったという事件がおこる。そして香は、母親の趣味であるパッチワークに「うちはこのパッチワークみたいに、バラバラなものをくっつけただけじゃん!」と。走って家を飛びだす香。追いかける結。結は思う。 「おれはお姉ちゃんの気持ちもわかった。血がつながってなくても家族は家族。全然平気だし、ふつうだし、しあわせだ。わかってるけど『かわいそう』とか『すてられる』とかいわれると、不安になる。足もとがぐらぐらしてくる。どんな親でも血がつながっていれば、幸せなのか。血がつながってなくても大切に育ててくれる親といた方が幸せなのか。どっちの方が幸せなのかはわからない。わかってることは、おれはお父ちゃんとお母ちゃんが、世界でいちばん好きで、おれのことを世界でいちばんすきなのもお父ちゃんとお母ちゃんだってことだ。お姉ちゃんのことをいちばんすきなのも、お父ちゃんとお母ちゃんだと思う。お姉ちゃんだって、きっとそうだ。だから、うちは、すきなものどうしの幸せな家族なんだ」
本作のいちばんの魅力は、結とその家族の人間味あるあたたかさ。みかん畑で誇りを持ってはたらく父、おいしいみかんのおやつを作ってくれる母、そしてくったくのない明るさを持つ結。 家族にはさまざまなかたちがある。でも、どんなかたちでも家族は家族。みんなすてきな毎日を生きている……そんなことをしみじみと感じる物語です。

特別養子縁組の家族のお話です。
先日娘と話していて
「でも、お父ちゃんとお母ちゃん(私)は、家族だけど血のつながりはないんだよ」という話になり、
「じゃ『家族』ってなんだろうね」と話したところでしたので
とてもタイムリーでした。
タイトルにもある「パッチワーク」はとても意味深で
「みんな寄せ集め。もとはバラバラなのに無理やりくっつけて一枚の布みたいな顔してる」というセリフにドキリとしながら
でもラストでは
「偶然じゃなく、えりすぐりでぴったりの布が選ばれた」
選んだのは「神様」だというところまで・・・。
本当に、何度も頷いてしまいました。
この本では、養子であることを隠していないけれど
隠していた方がラクだ・・と感じる、世間の目もあるでしょう・・。
最初は夫婦ふたりだったり
親と同居だったり・・
子どもができて、また子供が巣立って・・。
家族の形は本当に変わっていくものです。
でも
それぞれが思う「しあわせ」を実感できる場所なら
それは「家族」なんだと、感じました。 (やこちんさん 50代・ママ 女の子17歳)
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