
北海道の冷たい海。 海底を埋めつくす巨大なコンブ林を見て、「これだけコンブが生えているのに、海の水がコンブの味にならないのはなんでだろう?」と驚いた(!)と言う、水中カメラマンの阿部秀樹さんが、約7年にわたりさまざまな「コンブ」と「昆布」の姿をとらえた写真絵本です。 (本書では、生物そしての「コンブ」と、食品としての「昆布」で表記が使いわけられています)
“コンブは北の海でしか見られない海藻で、生きものとしてなじみが薄く、食材としての昆布も地味に感じるかもしれない” 作者はそう言いつつも、1300年前から日本人に利用され、南は沖縄で中国との密貿易に使われ、現在は世界的に注目される“だし”の文化をつくってきた「昆布」という日本の食材の奥深さ・おもしろさをさまざまな視点から紐解いていきます。
個人的には、迫力ある水中写真はもちろん、「昆布」という“だし”をとれる食材にするために、人々が手を加えている作業風景と解説は「へえー!」「なるほどー!」の連続でした。 「コンブ漁」「コンブ干し」「生きているコンブから、だしは出ない」の項目は特に圧巻。 「昆布ロードと北前船」で日本各地の昆布文化を知り、「昆布のいろいろ」で羅臼昆布、利尻昆布、真昆布、日高昆布、長昆布の違いを知ることができます!
……と熱く語ってしまうのは、わが家に無類の昆布好きがいるからかもしれません。小学生や中学生の娘たちもそれぞれに「とろろ昆布ってこんなふうに作るんだね」「白板昆布、食べたことない。(白板昆布をつかった押し寿司の)バッテラっておいしそうだね、食べてみたいなあ」と、写真を一枚一枚見ておもしろがっていました。
2013年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食;日本の伝統的な食文化」。 本書は、その基礎となる「だし」を追っていくシリーズの第1冊目です。 見過ごしがちな私たちの食の足元を見直し、そのおもしろさを再評価、未来への課題を提示するシリーズ。 学校や親子での学びにもおすすめです!
(大和田佳世 絵本ナビライター)

2013年、ユネスコ(UNESCO=国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された「和食:日本人の伝統的食文化」。その和食の味つけの基礎となり、素材のおいしさをそこなわずに料理にまとめるのが、「だし」の役割です。 だしといえば、まず「昆布」「鰹節」「煮干」の3つが思いうかびますが、昆布は海藻のコンブ、鰹節は魚のカツオ、煮干は魚のイワシと、どれも、もともとは海の生きものを加工してつくるものです。その意味で「和食のだしは海のめぐみ」だといえるでしょう。 第1巻『昆布』では、コンブがどんな海藻で、どう獲るのか、だし昆布はどうつくるのか、なぜ生きているコンブからはだしが出ないのか、昆布の歴史、いろいろな昆布、昆布だしのとり方、昆布料理、お祝いに使われる昆布、海のコンブに迫る危機などを、美しく豊富な写真を使って、わかりやすく紹介します。

和食のだしの基本、昆布。
干場の写真などは見た事がありますが、産地によって製法が異なってくるというのは初めて知りました。
湿らないようにしたり、形を整えたりと、思ったよりも手間ひまかけて作り出されているのだと知ると、やっぱりだしだけでなく、昆布そのものも食べたくなりますね。 (hime59153さん 40代・ママ 男の子10歳)
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