京都から転校してきて、「ぼく」の席のとなりになった岸田さん。 「ぼく」は岸田さんが苦手です。 きっかけは、転校初日の昼休みに起こったある出来事。 誰の落とし物だか分からない、ノートの切れ端がくしゃくしゃっと丸まったようなものを、「ぼくのじゃない」「わたしもちがうよ」と教室で押しつけあっていると、岸田さんがさっと捨てていったのです。
ほとんどしゃべらないし、知らない本を読んでいるし、あのおとなしいはずの岸田さんなのに、実は男子よりも足が速くて、びっくりするし……。 「ぼく」は何となく岸田さんに一目置きつつも、自分が恥ずかしくなるような、近寄りがたい気持ち。 そんなとき、学校からの帰り道でしゃっくりが止まらなくなった「ぼく」に、岸田さんは、「なすびは何色?」と不思議な質問をしてきて……。
“おばあちゃんの知恵”のような、ちょっとした日常の知恵を通じて交流が生まれる「ぼく」と岸田さん。 少しずつ変化していく微妙な距離感を、ユーモラスに描いた絵本です。
文章を書いた山本和泉さんは、大阪府生まれ。「第36回日産 童話と絵本のグランプリ」で童話部門の応募総数2,044編から大賞に選ばれ、今作がデビュー作となりました。 絵は『ふつうやない! はなげばあちゃん』(福音館書店)などインパクトのある絵本作品がある山田真奈未さん。 京都弁の岸田さんを、おとなしさの中にやわらかいユーモアがある魅力的な女の子として、繊細な線で描いています。 後半は色彩豊かにいろいろな野菜が登場し、絵とおはなしの、どこか懐かしいような不思議なハーモニーが楽しめる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
第36回日産 童話と絵本のグランプリで、応募総数2,044編から大賞に選ばれた作品。 京都から転校してきて、ぼくの席のとなりになった岸田さん。しゃっくりがとまらないぼくに、「なすびは何色?」と不思議な質問をしてきて……。ぼくと岸田さんの微妙な距離感を、ユーモラスにえがく。
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