ハヤイチくんは、しりとりと電車が大好き! 人と話すときの言葉もしりとりだし、すぐに電車ごっこであそびはじめる。でもわたしは、そんなハヤイチくんのことが、だいきらい。 授業中でもじっとしてない。やめてと言っても聞いてくれない。いやなことをしてもあやまらない。それなのに、先生はいつもハヤイチくんにやさしい。
人よりものんびりで、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な女の子、さくら。 そんなさくらは、いつでも好き勝手にふるまっているように見える、となりの席のハヤイチくんのことが、苦手でした。
たのしみにしていた、海辺での遠足の日。そんな日にも、ハヤイチくんにひどく恥ずかしい思いをさせられて、さくらはカンカンに怒ります。でも、仲良しな友だちといっしょにあそべば気持ちも晴れて、すぐにたのしく、おお笑い!
そんなとき、ひとりぼっち砂浜で電車ごっこをしているハヤイチくんの姿が、目にとまります。 「すなはまの せんろは、どこまでも どこまでも つづいていく。しらない 国まで、いってしまいそうな いきおいだ。 このまま だいきらいな ハヤイチくんなんか、いなくなっちゃえばいいんだ……」 それなのに、さくらはそんなハヤイチくんの背中から、目をはなすことができませんでした。
お母さんといっしょに作るお弁当や仲のいい友だちと過ごす、海辺での遠足! 遠足をたのしみにしているさくらの気持ちがとてもていねいに描かれていて、読んでいるとなんだかいっしょにワクワク、ソワソワしてしまいます。だからこそ、ハヤイチくんが起こしたトラブルには、悲しいやら恥ずかしいやら、さくらといっしょに胸がズキズキ……。
そして、遠足でいちばんたのしみにしていたお弁当の時間には、またもや事件がさくらを襲います。
こんどこそ無理だ……こんなのぜったい立ち直れない……と読んでてこちらが心折れそうになってしまうトラブルなのですが、そんなさくらを救うのが、ハヤイチくんの思いもよらない言葉。
自分とはぜんぜんちがう誰かを思いやる。そのことの難しさや温かさに胸を打たれる、やさしい物語です。
(堀井拓馬 小説家)
「ひかり りゅうおう うみねこ こだま。」 「まりも もりおか カシオペア。」 ハヤイチくんは 電車と しりとりが だいすき。 みんなと はなすときも しりとりで はなしをする。 じゅぎょうちゅう、 じっと いすに すわっていない ハヤイチくん。 わたしは そんな ハヤイチくんが にがて……。
遠足のおべんとうの時間。仲良し3人組みでお弁当を食べていると、突然、何かものかが、たまごやきを奪っていった。
マキちゃんの「ぬすっと」ということば。「と、とんび」!とあやねちゃん。 「ビ、ビ、ビンゴ!」とハヤイチくん。なんで あんなに うれしそうなの? 「ぬすっと」「とんび」「ビンゴ!」あ、ハヤイチくんの しりとりが、マキちゃん あやねちゃんと つながってる。
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