長い木の枝の先っぽから、ぶらん、とぶら下がる、なんともふしぎな形のなにか。オシャレなデザインの花瓶? モダンアートなツボ? いえいえこれは、小さくて黄色い鳥、キムネコウヨウジャクの巣! それを見て、著者の鈴木まもるさんはこう思いました。 まるで、妊婦さんのおなかみたいだ、と。
「キムネコウヨウジャクの巣が、なぜ妊婦さんとにているのか?」
そんな疑問をきっかけに明かされるのは、恐竜の進化と絶滅の秘密!?
鈴木まもるさんは『ピン・ポン・バス』や『せんろはつづく』、「黒ねこサンゴロウ」シリーズなどを手掛ける絵本作家で、鳥の巣研究家としても知られています。
現代を生きる鳥たちは恐竜から進化したとされていますが、どうして恐竜たちが飛べるようになったのか、どうやって鳥たちが大量絶滅を生き延びたのかなど、疑問はまだまだ残されています。
「巣や卵と、子育てのちがいをしらべれば、なぜ恐竜が絶滅し、鳥が生きのこったのかがわかるのでは、とぼくは考えました」
ちいさな恐竜はきっと、敵にみつかりにくいやぶの中や水辺、木の上などに巣を作ったはず。だとすれば、似た場所に巣を作る鳥について考えれば、当時の恐竜の生活が想像できるのでは?
水辺は水が蒸発して空気が上に流れ、空に飛び立ちやすい。やぶの中に暮らす鳥はふだんあまり飛ばず、敵に襲われたときに走って飛び立つ。当時の小さな恐竜たちもそれと似た環境で生活していて、少しずつ空を飛ぶように進化したのではないか?
本書ではそんなふうに、今も生きる鳥たちの巣の形状や生態から、はるか古代を生きた恐竜たちの秘密を推理していきます。
化石を発掘しなくても、むずかしい本を読み解かなくても、今を見つめる目と想像力で、はるか太古の謎に迫る。まるで、恐竜界のシャーロック・ホームズ!
恐竜の新たな一面を知れるということが本書のみどころであるのはもちろん── 身の回りにあるものに好奇心を持って臨み、よく観察すること。そして、興味のままにイマジネーションを羽ばたかせ、目の前にはないものをさまざまに思い描くこと。そういったことが、専門的な資料や経験にも並ぶパワーを秘めているということに、深い感動を覚えました。
鳥の巣研究家の著者だからこそ描けるユニークなアプローチで太古の世界を見つめ、恐竜の進化の秘密に新鮮な視点から切り込んだ、他に類を見ない一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
色々な形の鳥の巣。どうしてこんな形をしているのだろう?この疑問が、恐竜から鳥への進化のふしぎにせまる、鍵となったのでした。約130種の鳥が登場。恐竜も鳥も人間も、必死に命を守り育ててきたことが伝わる、感動大作です。
表題についてはしっていたものの、
副題の「鳥の巣からみた進化の物語」に惹かれました。
読んでみて、一流の研究論文並みのクオリティに脱帽です。
何より、「疑問に思い、調べてみる」という、科学の手法が、
滑らかでやさしい語り口で展開し、心地良いです。
キムネコウヨウジャクの巣が、人間のお母さんのお腹の形と似ているって、
この視点がすごいです。
そして、鳥の巣が生きていくうえでの知恵の結晶であること、
進化と生存の証であることがよくわかります。
巣の進化の様子をまとめた図は圧巻。
巻末で、「自然の形で、意味のないものはありません」という言葉が印象的です。
小学校高学年から大人まで、しっかり学べそうです。 (レイラさん 50代・ママ 男の子30歳、男の子28歳)
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