ふたつの大きなマンションにはさまれた、小さな家。壁のペンキははがれ、窓にはほこりがつもり、玄関にはカギがかっていました。ずっと昔、この小さな家は広い庭の真ん中に建っていてある家族が住んでいたのですが、町がどんどん大きくなって、両隣に大きなマンションが建つと、家族は引っ越してしまい、それ以来誰からも見向きもされなくなってしまったのでした。
でも、こんな珍しい場所に建っている誰も住んでいない家を近所に住んでいる子どもたちが見逃すはずはありませんよね。まさしく、おさげ髪のアリスと金髪のジェーンがそうでした。二人は学校の帰りに小さな家の中をよくのぞいていました。それと同時に、いつもかごを下げて出かけ、小さな家で立ち止まって中をのぞいている小さなおばあさんのオブライアンさんのこともよく見かけるのでした。
小さな家にはときどき人がやってきては、住むには至らずに帰っていきます。そんなある日、アリスとジェーンがためしにドアノブを回してみるとなんとドアがガチャリ、と開いたのです! そうじがかりの人がカギをかけ忘れたのかもしれません。おそるおそる中に入った二人は「おうちごっこ」をはじめ、そのうちオブライアンさんもやってきて楽しい時間が始まりました。けれどもそこに大家さんが大きな声でどなりこんできて‥‥‥!
さて、この後、勝手に家に入ったことに腹を立てた大家さんの心をあるものが動かしていきます。それはいったい何だったのでしょうか。ダダダダッと展開していく後半は、アリスとジェーンはもちろん、オブライアンさんにとっても、そして小さな家にとっても良い方向へと転がっていき、読者を満ち足りた気持ちにさせてくれるでしょう。
作者は、『うちの弟、どうしたらいい?』(岩波書店)、『ねこのホレイショ』(こぐま社)、『ハイパーさんのバス』(徳間書店)で知られる、ニューヨーク生まれの児童文学作家、エリナー・クライマーさん。ユーモアいっぱいの温かなお話を、小宮由さんが親しみやすい訳で届けてくださいました。テンポの良い会話で進むお話は声に出して読むと、いっそう楽しさを増すようです。
佐竹美保さんの挿絵も登場人物が魅力的でユーモラスに描かれ、とくに大家さんのとってもこわい姿が一気に変化していく様子は注目どころ! しっかりと大家さんの表情の変化を見届けてくださいね。また、本の最初のページに描かれている大きなマンションに挟まれて建っている小さな家の様子もとっても魅力的で、子どもたちはこの絵を見た瞬間から、お話にぐっと惹きこまれるのではないでしょうか。さらに、いつもオブライアンさんが持っているかごの中身が気になっていたアリスとジェーンでしたが、そのかごのふたが開かれるページは、もう思わずうわあ〜っと声を出してしまいそうになるほど、素敵なものがあらわれます。
小学1、2年生からおすすめの、幸福感に包まれる楽しくて温かな幼年童話。ぜひ親子で一緒に楽しんでみてくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
町の通りに、大きなマンションにはさまれた小さな空き家がありました。いつも窓をのぞいていたアリスとジェーンは、ある日、とうとう足をふみいれます。おうちごっこはクッキーやさんに発展! ところがそこへ大家さんが怒鳴りこんできて……。だれにも見向きもされなかった小さなおうちに、人の温もりと明かりがもどります。
大きなマンションにはさまれた小さな家は、小さな人しか入れない不思議な家です。
肥った人、背の高い人は入れず、大きな物も入れられない不思議な家です。
どんなことになるのかと思ったら、子どもたちと小柄なおばあさんの、素敵な場所になって良かったのですね。
でも、どんな人が住んでいたのでしょう。
大柄な大家さん、教えて下さい。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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