たもんはお父さんと、はじめてのイワナつりにやってきた。山の中の川、大きな淵で何度もエサをながすけれど、つれない。 あきらめかけたとき、さおさきがグイグイッとまがった。さかながくいついたのだ。さかなはグイグイひっぱり、頭があつくなり、しんぞうがドッキンドッキンする。右に左におよぎまわるさかなと長くたたかったすえ、ついにたもあみの中にさかなをとりこんだ。 「すごいぞ、イワナだ! おおものだ」 はじめてつりあげたイワナだ。たもんは、ほおずりしたくなるほどいとおしかった。 やがてお昼になると、「たもんのつったイワナをごちそうになるべ」と、お父さんはイワナをくしにさし、たき火でしおやきにした。たもんはむねがいたみつつ、ガブリとやった。 「うまいよ!」話しかけるようにいうと、なみだがポロンとこぼれた…… 釣りを通していのちの躍動を感じ、そのいのちをおいしくいただくことで、初めていのちの大切さ、重さを実感する。そうした少年の心情を、繊細かつ力強く描く絵本です。
初めて、自分が苦労してイワナを釣り上げた感動が、食べるということと結びつかないことはよくわかります。
釣り上げるという行為は、イワナの命を奪うということと繋がっていたのです。
眼の前で魚の命を終わりにするということは、残酷にも思えます。
でも、これが命をいただくということなのですね。
命をいただくということはきれいに食べつくすということ、そしてそのことによって自分がいきるということ、絵本でありながら学びの大きい本でした。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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