川はいつも山からはじまって、いつか海に出るなんて、本当かな? それなら、行ってたしかめましょう。案内人は土偶の神さま!?
空を飛ぶ鳥の背から見下ろしたような視点から、日本の川と、それをとりまく大自然の景色を描き出す「日本の川」シリーズの一冊です。こんどの舞台は「北上川」。岩手県を縦断して宮城県へと抜ける、東北最大の大河です。
不思議で愛くるしい土偶の神さまに連れられて、すいーっと高く空を飛び、ページをめくるたびに源流から少しずつ南へと景色を移していく、全長249kmの旅路! ときには山と山とのあいまを抜け、ときには町や田んぼに寄りそって流れ、そして新幹線がひた走る線路と交差しながら、北上川は海を目指します。
本書のみどころはなんといっても、空高くから景色を見下ろすかたちで描かれた、その視点! はるか眼下にのぞむ流域の町々や自然、電車や線路などの細かな描き込みは、「地図やジオラマ模型をながめるのが好き!」という人にもグッとくるはず。
おおきくうねったり、いきなり二手に別れたり、どうしてこんなに川筋がダイナミックなの? 日本人ならだれもが知ってる、あの童話作家もここで生まれた! 各ページに描かれた地域の歴史的な背景や、そこに生息する動植物、伝承などにふれながら、北上川の流域で古くから営まれてきた人々の生活と文化を学ぶことができるのも、本作のおおきなみどころです。
はじめは細かった川が、その旅路で幾度もほかの川と合流しながらおおきく成長し、やがては大河になる。東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市の港が旅の終わりであることも相まって、北上川の力強く雄大な変化は、あたかも激動の歴史をそのままあらわしているかのようです。
巨大河川のはじまりから終わりまでを追う、歴史と空の旅に出発!
(堀井拓馬 小説家)
日本中の川を描いてきた鳥瞰絵地図師・村松昭の「日本の川」シリーズの最新刊。 岩手・八幡平のふもとから流れだし、北上山地と奥羽山脈のあいだをつらぬいて、宮城の石巻で太平洋にそそぐ、東北最大の川・北上川を、親しみやすい鳥瞰絵地図(上空からの視点で立体的に描いた地図)で見ていく絵本です。
全長249kmにおよぶ流域には、いまも公害から人々を守るダムや、洪水で水が流れこむしくみの遊水地、川の流れを大きくふたつに分けるような堰がつくられるなどして、人々のくらしに大きくかかわってきました。河口には2011年の東日本大震災の被害から、力強く復興をあゆむ大きな町もみられます。
また縄文時代の人々のくらしたあとや、中世に力をもった大きな豪族のお屋敷あとなど、古くから人びとがくらしてきたことを感じるものもたくさん残っています。
そんな東北の大河・北上川を、土偶すがたの神さまと蝦夷(エミシ)の少年が雲にのって、空の上から案内します。
この本を読ませて頂いて、とても感動しました。これは北上川の魅力をしっかり伝えてくれます。私は北上川を実際に見たことはありません。けれどもこの本を読んでいると、まるで北上川を訪れたような感覚になります。私にとって川はひじょうに魅力的なものでした。昔、川をテーマにした詩を書かせて頂いたこともあります。それだけにこの本はいつまでも印象に残っています。 (水口栄一さん 60代・その他の方 )
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