海に浮かぶ、ふたつの島がありました。 大きな島には金持ちと貧乏人がいました。 ちいさな島には生きることをゆったりと楽しむ人々がいました。 ある日大きな島で金が発見されてから島の崩壊がはじまりますが…。 国際アンデルセン賞受賞画家の代表作。
大きな絵本に描かれた二つの島。
二つの島の対比は社会そのものです。
発展した大きな国には、貧富と階級が生まれて、貨幣経済が根付いていました。
素朴な小さな国には、自然と共同生活がありました。
ゲゼルシャフトとゲマインシャフトのような構造です。
大きな島は開発のために、小さな島の土砂を運んで開墾を始めます。
小さな島はどんどん小さくなっていきます。
小さな島の長が、土砂を取り去ることを中止するように陳情に出かけた時に見た大きな島の碑。
碑の下に金鉱が見つかった時に、大きな島の社会構造は破たんしていきます。
王が権力の誇示のために搾取に走った時、社会バランスは崩れ、社会としての営みが失われたのです。
農業、漁業は破たんしました。
王は何より、自分の偉大さを誇示する事業に労働力を集中させたのです。
足りない労働力を補うために、小さな島の住人を狩り出します。
そして、島の崩壊。
なんだか、鋭い社会批判のようなお話で、他人事ではすまない感じがしました。
これほど社会は単純ではないけれど、二つの島を見ていると、環境破壊、南北問題と現代社会を考えさせられます。
何より二つの島の対比が詳細に描かれていることが、この絵本の特徴。
見ていると、考え込んでしまいました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子15歳)
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