詩集のはじめに、「ほほえみ」という詩があります。
ビールには枝豆 カレーライスには福神漬け 夕焼けには赤とんぼ 花には嵐 サンマには青い蜜柑の酸 アダムにはいちじくの葉 青空には白鳥 ライオンには縞馬 富士山には月見草 塀には落書 やくざには唐獅子牡丹 花見にはけんか 雪にはカラス 五寸釘には藁人形
ほほえみにはほほえみ
どうでしょう。美味しい詩でしょう? 川崎洋さんは若い頃、茨木のり子さんと同人誌「櫂」を始めて今も続いています。 ユーモアやエスプリの利いたお洒落な小咄を、上等な葡萄酒にも似た芳醇な香りの詩篇に仕立てる練達の詩人です。
何より、タイトルになっている「ほほえみにはほほえみ」の詩にうっとりしてしまいました。
ユーモア、言葉の歯切れの良さ、軽快さ…、感性の世界にすっと入って、浮遊させてくれるマリンブルーの海中のようです。
ちょっと大人で、落ち込みのない空間。
思春期の世代に、すっと手渡せるような詩集です。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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