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夜の山道を歩いていた青年はエリル星人と出会った瞬間,エリル語しか話せなくなった。表題作など17話のSFショートショート。
『星新一ショートショートセレクション8』(理論社)。
表題作である「夜の山道で」をはじめとして、17篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
星新一さんの本を読んでいると、腹ばいになって本に夢中になっている子供の姿がつい目に浮かんできます。
子供は私ではありません。子どもの頃、星さんの作品に出会っていたら私もきっとそうであっただろうという、空想の世界です。
そして、この子供の頭の中はたくさんの夢にあふれています。
星さんの作品には、そんな姿を浮かばせる力があります。
この巻では「王さまの服」が面白かった。
有名なアンデルセンの「裸の王様」のパロディのような作品です。
原作のように、心の正しい人には見えて悪い人には見えないと詐欺師の洋服屋に騙される王様の話。原作では、正直な子供が「王様が裸だ」となっておしまいですが、星さんは見えない服が国の統治に一役買ったことにしてしまいます。
最後、この王様が結婚することになって、王女がいう一言がいい。
「悪くないけど、似合わない」
うまいオチだ。
「レラン王」という作品もよかった。
ある時神から大洪水になるお告げをもらった王様が、むざむざ死ぬのは嫌だと夢の世界に入ることになる。そこで、王様は世界の歴史をたどっていくという、夢! のようなお話。
星新一さんこそ、夢見る子供だったに違いない。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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