|
マリナーズの試合に行く日、ヘンリーは友達とけんかをしてしまう。戦争体験のあるおじいちゃんに、イチローの活躍をたたえながら「許す」ことの大切さを教えられ――心あたたまる絵本。
親友オリバーと大ゲンカしたヘンリーは怒りがおさまりません。どうやって仕返しをしようかとリストまで作りました。その日は、チャーリーおじいちゃんとセーフコフィールドにマリナーズの試合を見に行く日。おじいちゃんが迎えに来ても、ヘンリーの頭の中はオリバーへの怒りでいっぱいでした。球場で理由を聞かれたヘンリーは、おじいちゃんにけんかのことを話します。するとおじいちゃんは、自分ももう絶対に許せないと思ったことがあった…と、日本と米国の戦争について話してくれました…。
作者のオキモトさんはセーフコフィールドにこだまする「イ・チ・ロー」コールを体感し、「これは奇跡」と思ったそうです。ご主人が日系二世である彼女は日米開戦以来、両国間のわだかまりを常に感じてきたとも話してくれました。イチローから贈られた奇跡を何とか絵本にしたい、と創作したのがこの作品。大好きなイチローを通して、この国と日本の歴史を知る、本作品はそんな使命を担っているとも言えます。
マリナーズのイチロー外野手が米国に与えた影響は野球に関することばかりではありません。地元紙は「イチローになりたい米国少年少女」の姿を伝え、日米文化融合の社会現象ともなりました。そして、もうひとつ、この作品にも描かれたように、第二次世界大戦で敵同士となった日米兵士たちの憎しみ・心のわだかまりをあっという間に解いてしまったこと。イチローを始め、米大リーグにおける日本人選手たちの活躍を一番喜んだのは、当地の日系人たちであったことは言うまでもありません。
昨年の夏、英語版が出版され、今年の春、日本で邦訳版を手にしました。息子にはまだ読んでいないのですが、表紙を見た息子は「読む!」と張り切っていました。 対象は小学3−4年生ぐらいから。 (ムースさん 30代・ママ 男の子9歳、女の子3歳)
|