
1944年8月,那覇から九州に向かった学童疎開船・対馬丸は米潜水艦の攻撃を受け沈没,1400名を超える犠牲者を出した.対馬丸に乗った子ども達はいかに生き,死んでいったのか.生存者の証言や記録を辿りながら,当時の子どもたちが対峙した戦争の意味を問い直す.

『悲しい対馬丸の話』を読んでから気になっていたことがあります。
絵本の中に語りきれなかった対馬丸の事実があるのです。
自分の中で未消化なことを子どもに語れない。
沖縄戦、沖縄からの本土への学童疎開、そして撃沈…。
この本はジュニア向けでありながら、子どもだけにではなく大人に対しても強いメッセージ性のある本です。
貨物船におさめられた学童と一般人は荷物と同じ環境で運ばれようとしたのです。
そして、潜水艦の魚雷によって沈没する際の大混乱。
そのまま死んだ人も哀れでしたが、生き残った人たちは生き残るためにさらなる地獄を起こします。
生き残るために人を蹴落とす人、物のように海に消えていく人、運命というのか運というのか…、絵に描かれていなくて良かった。
そして、生き残った人たちは、沈没を表に出さぬために事実を語ることを禁じられ、軟禁状態に。
本土にたどり着いた者にも、沖縄に戻った者にも戦争は終わっていなかった。
この本は、対馬丸に乗りあわせ生き残った人間から聞いた事実に基づいて書かれています。
絵本を読む者として、絵本の裏側にある事実をしっかりととらえて語らなければいけないと思わされ、事実を知ることで絵本はさらに大きなものになることを感じました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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