戦後、兵器会社の社長となった男のもとへ、怪物がやってきます。それは、男が少年時代戦争への憎しみをこめて作ったねん土細工でした。
『ズッコケ三人組』シリーズを書いた那須正幹が手掛けていることに驚いて手にした図書です。
家族を戦争で失い、おばあさんのもとに引き取られた少年が通った過疎村の小学校。
戦争直後、少年は戦争が再び起こらぬよう、あのような兵器を作らないと誓って「ねんどの神さま」を作りました。
それから50年後。
閉校となった小学校の倉庫で眠っていた「ねんどの神さま」が「怪獣」となって東京に向かいます。
映画「ゴジラ」の第1作のような鋭い社会批判となっています。
立ち向かう自衛隊。
「怪獣」と倒すためにいろいろな兵器が使われ、「怪獣」は倒れないけれど巻き添えになった多くの人々が亡くなります。
「ねんどの神さま」が向かったのは、かつて自分を作ってくれた少年でした。
少年は兵器を作る会社の社長になっていたのです。
結末は残酷です。
そして解決感がなく、社長は胸のつかえが取れたことにホッとして兵器を作り続けるようです。
子どもの心はここまで変ってしまうのかという、痛烈な皮肉をこめた作品です。
この絵本を紹介するのには少し勇気がいりました。
しかし、児童文学者でありながら平和活動にも力をいれている那須正幹さんの実験的な作品としてお薦めしたいと思います。
なにしろ、近頃読み聞かせに無反応の中二の息子がじっと見入ってくれましたから。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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