月の夜にぼくは生まれた。何度も何度も転んでは立ちあがった。おかあさんの後についていっぱいまねっこもした。厳しい自然の中での子育てに、親子のつながりを静かに描く。
自然界では当たり前の子どもの成長が、いもとさんがやさしく微笑ましく描いている子どもの成長が、どうして心に突き刺さるのでしょう。
産まれて間もなく懸命に立ち上がろうとするカモシカ。
親の力を借りずに自分で立ち上がったカモシカ。
ご褒美はお母さんのおっぱい。
お母さんはやさしく、いろいろなことを子どもに教えます。
自分が育ってきたように、生きることを伝えます。
子どもはお母さんを頼りながら、自分を鍛えます。
でも、あるとき突き放されるのです。
このシーンを、いもとさんは言葉の色を変えて強調します。
突き飛ばされた子どものカモシカ。
やがて子どもはその意味を理解し、ひとり立ちしていきます。
自然界で当たり前のことなのです。
でも、ここに当たり前ではない自分がいました。
子どもを突き飛ばす、親としての強さを私は持っていません
親の思いをこどもが理解してくれるという、自信も持っていません。
ただ、子どもの自立に不安なちっぽけな親がいるだけ。
身体で子どもに伝えたことの達成感。
子どもがそれに応えてくれるという安心感。
どうしたら得られるのでしょうか。
この絵本。
子どもに向けた読書でしょうか。
大人向けの教科書でしょうか。
絵がとても澄んでいるだけに、心にひびいてきます。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子15歳)
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