私達の子供の頃から読み継がれてきたベストセラー「星の王子さま」。今まで慣れ親しんできたそれは岩波書店の内藤濯さんの訳のものでした。今年の一月に日本での著作権が切れて今、次々と新しい訳の「星の王子さま」が出版されています。 中でも話題になっているのが7月10日に亡くなられてしまった倉橋由美子さんの訳したもの。添えられた文章に「世の中に童話と称して大人が子供向きに書いた不思議な作品があります。」とあり、この話が「その種の作品ではありません」とはっきり書いてある事からもわかる通り、原作に忠実にシンプルでやや硬質な大人向けの作品に仕上がっている様です。倉橋さんは絵本「ぼくを捜しに」「ビック・オーとの出会い」の訳者としてもお馴染み。そう考えると、大人向けときっぱり言っても子供にちゃんと伝わる文章なのだと想像できますね。 他にも中央公論新社から小島俊明訳、論創社から三野博司訳、8月には集英社から池澤夏樹訳が出る予定だそうです。語尾が「です・ます」調、「だ・である」調の違いであったり、直訳風であるとか特色がそれぞれ違う様です。興味のある方は読み比べるのも面白いかもしれませんね。 色々な論争が起こるのは間違いない、「星の王子さま」のこれから行方が気になりますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
私が初めてこの本に出会ったのは小学校の4年生の時でした。文章は簡単なのですが内容がよく理解できませんでした。でも、絵に描かれた大蛇とバオバブがとても印象に残りました。
子供はまだこの本に興味はないようですが、冒頭の「大蛇」にはものすごく食いついてきます。「うわばみ」「ボア」「大蛇」など訳者によって違う言葉で訳されています。子どもは「これはアナコンダなんじゃない」と言っています。アナコンダがワニや牛を丸のみにした写真をみたことがありますが、ゾウまで丸のみにするのかと驚いてしまいます。テグジュペリは本当に見たことがあるのでしょうね。また、はじめてバオバブのことを知りとても興味がわきました。この木は見た目が変わっていますが、年輪がないなど、普通の木とはずいぶんちがうようです。
この物語の中で、一番気になるところはきつねが王子さまに「自分を飼いならしてくれ」という場面です。友達になることを、飼いならすというのが、どうしてもわからないのです。
今回、この部分のいろいろな訳を見比べて見ました。なじみになる、絆をつくるなどでした。倉橋さんは「仲良しになる」としていますが、これは曖昧に訳した、と本人がおっしゃっています。私がこの部分が理解できるようになればいいなと思います。
「大人というのは全く不思議だ」と王子様がいいます。戦時下の世の中の矛盾を言っているのでしょうか。わがままなバラはテグジュペリの妻のことを言っているともいいます。この本の解説書を読んだあとでは、つい深読みしてしまいます。子どもがもう少し大きくなって、先入観なしにこの本を読んだときの感想を聞きたいなと思っています (どくだみ茶さん 30代・ママ 女の子6歳)
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