童話「ラプンツェル」をもとに、母親の娘への過剰なまでの愛、運命に導かれる若者と娘の一途な愛を描きだした、現代に通じる物語。
あの『ラプンツェル』を好きな人にはたまらない物語です。
ラプンツェルは魔女にどのように育てられたのでしょうか?
魔女はどんな女だったのでしょうか?
グリム童話では、登場人物のキャラクターまでは深堀されていなかった。
この『わたしの美しい娘』は、『ラプンツェル』の物語をベースにして、このように考えられるのではないかと、一つの仮定から構成されています。
『ラプンツェル』の登場人物である、魔女とラプンツェルと王子にスポットをあて、それぞれの視点から物語を語る章を作り、絡み合うように物語を築き上げています。
それが、生活感、重量感、人間味を持って語られ、すごく説得力を持っているのです。
物語は、ツェルという娘と母親の物語として始まります。
立ち寄った町でツェルが知り合った男がコンラッドという王子。
母親の異常なまでの独占愛により、ツェルはコンラッドへのあこがれを断ち切られ、塔に幽閉されてしまいます。
それでもツェルにとって、母親は自分を守る愛すべき存在だったのです。
その母親に、自分の父親や生い立ちのことを訪ねても答えは返ってこない。
実は、母親と思っていたのは、ラプンツェルというレタスと引き換えに、やっと子どもを授かった夫婦から赤ん坊を奪い取った不妊症の女。
不妊症の女の赤ん坊欲しさは、決して絵空事ではない。
純粋に母とおもった女を慕うツェルに、これ以上ない裏切り。
原作の『ラプンツェル』を知っている人には、納得できる物語が展開します。
あのラプンツェルは塔の中でどのような生活をしていたのだろう。
狭いところに閉じ込められていたら精神的にも疲労します。
生活していればいろいろなことがあります。
そうだよな〜、そうだよね〜という感じで読み終えて、感慨深いものが残りました。
この物語を象徴するのが、石を抱くカモでしょうか。
ツェルはカモのために本当の卵を置いてやりましたが、カモはその卵は割ってしまって、石を抱き続けるのです。
ドナ・ジョー・ナポリは童話をベースに、様々な作品を書き続けている作家だそうです。
他の作品も読んでみたいのですが、入手は難しそうです。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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