『ティラノ』シリーズの1冊目です。
この絵本を読んで最初に思ったのは、父性と母性のことでした。父親だから父性をもっているわけではなく、母親だから母性をもっているわけではありません。どちらも父性性、母性性をあわせもっているのだそうです。
ウマソウが夢中で草を食べているときには、他の恐竜に襲われているのにもかかわらず、まったく何事も起こっていないかのようにティラノは草を食べ続けるウマソウを護ります。また、ウマソウが取ってきた赤い実を「おいしよ」といって口に入れます。肉食獣にもかかわらず。こうやってウマソウを護り受け入れたのはティラノの母性性の部分です。
その後、体あたりや、しっぽの使い方、ほえ方を教えます。これは父性性の部分です。
こうしてティラノのおかげで、ウマソウは立派に成長し、自立するのです。ティラノは見かけによらず、父性性と母性性をバランスよく使い分けられる優れたお父さんのようです。
しかしながら、ティラノやウマソウが棲むおおむかしの世界の夜空は、星でいっぱいですね。ウマソウがティラノの脚にしがみついて眠っているときも、そして別れのときも。ティラノのココロは、この満天の星空のように澄んでいることでしょう。