トミーはチェコスロバキアにあったユダヤ人強制収容所で両親と共に
暮らす男の子。
お父さんは絵描きさんでドイツ軍のための製図を書いていたため、
他のユダヤ人家族よりは恵まれた生活だったようです。
かわいい息子のため、軍に内緒で書き溜めた絵を壁の後ろに隠して
置きました。
トミーの三歳の誕生日。
もしも戦争がなければ、こんな楽しみがある。もしも戦争がなければ、こんな美味しい物が食べられる。もしも戦争がなければ… もしも…
お父さんの魂の叫びは、数十枚の絵となってはじけます。
しかし、お父さんの絵が軍にばれて、彼はアウシュビッツに送られて
そこで亡くなってしまいます。
お父さんは言っていました。
この絵がもし兵士にみつかったら…と想像するとすててしまおうか、
もしてしまおうか…
いやいや、壁の外の人達にここで起きたことをなんとしても知って
もらわねばならないならないのだ。こんなことが、けっして二度と
ふたたびおこらないように。
隣人であり、後にトミーの養父となる人の証言やトミー自身の思い出
も載っていますが、生き延びただけでは、幸せではなかった戦争の
傷跡は大きかったようです。
それでも、回りの人たちに支えられ四人の子の父となったトミーが
今は幸せと言う締めくくりでホッとしました。
命と引き換えたお父さんの絵が奇跡的にこの世に発表された
のですから、世界は平和への道を突き進んで欲しいです。
お父さんもお母さんも、そして児童書が読めるようになった多くの
子供たちにも、是非読んで欲しい一冊です。