以前、書店で見かけ、気になって立ち読みしてしまいました。
そして、あまりにひどい内容に驚きました。
この絵本を読むことを想定されている子どもたちのうち、果たしてどのくらいの子たちが実際に生き物を飼ったことがあるでしょうか。
私は子どもの頃から、本当に色々な動物を飼ってきました。彼らの生死は身近にあり、その時々でありのままの姿を見せてくれました。
この絵本を読む大人の読者には、多かれ少なかれ私と似たような経験があるかもしれません。
ところが、幼い子どもたちはどうでしょうか?
『いぬかって!』というタイトル、素朴で単純化された子どもにとって親しみやすいと思われる絵の表紙からは、この本がそのような人生経験を必要とする絵本には見えません。
犬大好き!動物大好き!という気持ちで、わくわくしながらこの絵本を手に取った子どもたちが、この本を開いた時のショックは計り知れません。
子どもが大人と同じ人格を持った同等の人間であることには異論はありませんが、子どもと大人のものの感じ方、考え方は違います。経験の厚みも違います。
なぜわざわざこのような絵本を幼児に見せる必要があるのか理解できません。対象年齢をみてびっくりです。
私はこの本は子どもに対する暴力とすら感じます。
大人の心に響くのであれば、それはそれで価値ある絵本なのでしょう。
しかし、繰り返しますが、子どもは「小さい大人」ではないのです。
「子ども向け」の表紙ですが、私はこの本は大人の本だと思います。それもかなり好き嫌いが分かれるタイプの。
ちなみに、多くの動物たちの臨終に立ち会ってきた私は、この本で感動することはなく、大変嫌な気分になっただけでした。命を「利用」して、まだ人生経験の浅い子どもたちに罪悪感を押し付けるような描き方に、腹立ちさえ覚えます。