「君たちはどう生きるか」と同じ匂いがしました。
だからもしかして発行されたのも同じような時代なのかな?と、
思ったけれどこの絵本の方が30年後で、私と同い年なのでした。
とてもおもしろく、そして考えさせられました。
大人の私が読んでもおもしろいのに、書いてあるのは子供の話。
そしてその子供の描写がいい。作者の石井桃子さんは、子供のこ
とをよくわかっている方なのだなあと思います。
のっけから、ノンちゃんが置き去りにされて泣いている場面から
私は引きずり込まれてしまい・・そうだったそうだった、と、自
分の小さかった頃をしっかりと思い出してしまった。こっそりと
置き去りにされる悔しさ、大人が約束を守ってくれない時の悔し
さ。ノンちゃんに同化してしまう。
私はノンちゃんのようにくっきりとした優等生ではなかったけれ
ど。しかし、くっきりとした優等生でいるということに甘んじて
いてもいけないというおじいさんのお話も深くて。
登場する人々がそれぞれ個性があるのだけれど、皆いい人ばかり
というのも大好きなところ。お父さんのこだわりのなさ、お母さ
んの働き者なところは、お父さんお母さんの理想の形のひとつだ
と思う。お兄ちゃんの純朴さは、妹であるノンちゃんの立場だっ
たらちょっと苦手かもしれないけれど、傍からみていると、おじ
いさんの言う通り。素晴らしいお兄ちゃんだ。あわてんぼうで、
わすれんぼうで、のんちゃんとくらべたら学校のお勉強は出来な
いけれど、でもきっとお父さんもお母さんもお兄ちゃんのよさを
きちんとわかっているのだろうなあ。犬をとっても大事にしてい
るところも素敵。