人魚にまつわるお話で 幸せなラストの物を思いつきません。
いつも、人魚はその美しさや儚さゆえ、また珍しさゆえに、人間にひどい仕打ちを受けて最後は死んでしまう・・というようなイメージがあります。
作者の小川未明さんは明治生まれで、この作品は大正時代に発表されたものだという事ですから、「むかしばなし」ではないのですが、全体的な雰囲気からは、古くから語られてきた伝説みたいな印象をうけます。
「むかしばなし」の多くに含まれている社会風刺みたいな感覚を、この作品からもうけました。が、あまり深く考えずに「人魚の娘さんも、お母さんもかわいそう」と、切なさやおそろしさを味わうのもいいと思います。
全体的に漂う寂しさや、怖さ、絶望感などの趣を楽しめるのは、小学校高学年以上でしょうか・・。
もちろん、もっと小さな子にも読んで聞かせてあげられるとは思います。 大人があれこれ「これは難しいからまだ早いわ」と考えていても、子供は それなりに何か感じて楽しむものですよね。
このお話にぴったりの 酒井駒子さんの挿絵がとても素敵です。
ぜひ手に入れたい一冊です。