2009年刊行。
・「災難」絵:外山光男
・「海」絵:田辺富士男
・「博士とロボット」人形アニメ:パンタグラフ
星新一の皮肉とユーモアに富んだ楽しい短編を、個性豊かな作家たちが独自の世界観で表した絵本。
3編の話はそれぞれ1964、1965、1988年の作品。絵をつけたのは2000年代後半。原作が出来上がってから何年もたってから、絵本になったり、人形劇になったりする人気ぶり。話自体が面白い上、古びないので、後輩のクリエーターたちも楽しく仕事ができたのではないだろうか。
パソコンで描いた絵を多く見るようになった昨今、特に心に残ったのは手作り感いっぱいの人形劇風の作品。テレビで人形劇を見ていた世代には特に懐かしく感じられると思う。手間暇かけて作った、愛情たっぷりの作風が妙に楽しい。
お話自体は、かなり痛烈。人間は、いい大人になっても、結局、よくわからないまま流されて生きているのだろうか。
妙な世界に紛れ込んでも、なんとなく適応して生きてしまう気もする。変なことが起きても、慣れてしまう。誰も突っ込まなかった疑問を、あえて突っ込みを入れてみる勇気といたずら心があって、面白い。
世の中、うまくいかないことや思い通りにいかないことの方がはるかに多いが、この絵本を読むと、それでもどうにか生きているような気がしてしまった。妙な楽しさと、人を元気づける力がある作品だ。