まずこれは、子ども向けの絵本ではないと思います。
なのでこのサイトの趣旨からは、ずれてしまうかもしれません。
主人公は深い深い悲しみに沈み、
前を向くことがどうしてもできないでいる人です。
大切な人を失くしてしまったからです。
私は彼のように、まだごく身近な大切な人をなくした経験がありませんが、
この本を読めば伝わってくるものがあります。
彼がどれだけその人を愛していたか。
その人の成長がどれだけ嬉しかったか。
共に過ごす生活がどれだけ楽しかったか。
そんな存在を失うことの悲しみが、どれほどのものなのか。
読み手にそれが伝わると共に、彼も思い出し、気付いていくのです。
愛していたから得た、幸せな幸せな日々のことを。
そしてほんの少しだけ、
彼の心は前に進むことになります。
深い悲しみをここまで表現した絵本は他にないのではないでしょうか。
悲しみのない人生などありません。
私はまだまだ若いですが、悲しみを重ねていくたびに、
この本は違った意味を見せてくれるのだと思います。
ほんとうに、すばらしい本です。
子どもにはきっと難しいと思うのですが、
もしかしたら何かひっかかるものがあるかも分かりません。
お母さん方にぜひ、手にとっていただきたい絵本です。