葉祥明さんの絵は、現実をオブラートで包んだような、スピリチュアルな世界を演出するので、生々しい描写で迫って来る絵本とは距離感があります。
その葉さんが広島ではなくて長崎を選んだことに意味を感じます。
遠景で描かれた1945年8月9日の長崎の朝は、戦争すら感じさせない夏風景です。
それが原爆破裂の瞬間から、重苦しい空気感に包まれて祈りのような風景に置きかわります。
絵の力で刻印するようなインパクトではなく、心の奥で浸透してっくような手法に、違和感を覚える人もいるかも知れません。
この葉祥明流の平和願望は崇高です。
何よりも、長崎にも原子爆弾が落とされたこと、威力としては広島に投下された爆弾よりも怖いものだったのだと、言いたい絵本です。