ミクロの世界の大冒険
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投稿日:2020/09/02 |
原題は、”TWO BAD ANTS”。
食べもの探しのアリがみつけてきた、キラキラ光るおいしい物に、みんなのお母さんである女王アリは大喜び。
アリたちは、お母さんを喜ばせたくて、みんなでキラキラ光るおいしい物を取りに行きますが…。
オールスバーグさんの描く、アリの世界が、とても魅力的。景色の一部を切り取った、その周り、時間的にも、空間的にも、描かれていない部分までが頭の中に広がります。
アリいっぴき、いっぴきも、同じ形で描かれているのに、それぞれ個性があって、ひたすら可愛く、子ども達はスーッと感情移入して楽しんでいました。
原文の雰囲気と文章に近い訳は、村上春樹さん版だと思いますが、テンポ良く物語を追えるのは、きじまはじめさん版です。訳者あとがきに書かれた、きじまさんの挑戦は、大成功されていると思いました。
すごいです。
声に出して読んで、絵をじっくり眺めて、アリの「こりごりな」大冒険を楽しんでいただきたいです。
*p26〜p27が理解出来ずに調べました。ディスポーザーという、日本ではあまりみない装置の事でした。
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アリの世界に入れます
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投稿日:2020/09/02 |
原題は”TWO BAD ANTS”。
表紙のアリを見てください。
肩を組んで、いたずらっ気タップリ、得意げに笑っているアリ。
この小さな2匹が経験する大冒険と、その結末は…?
オールズバーグさんの描く小さな世界が、魅力的。
時間的にも、空間的にも、一枚の絵から、無限に世界がひろがっていくようです。
アリもいっぴきいっぴき同じ形なのに、全部違って個性があり、なんとも可愛くユーモラス。「ありゃりゃ〜」といいつつ、気がつくとアリたちを応援しています。
小さな子どもにテンポよく読むには、きじまはじめさん版ですが、原文の雰囲気と情報量に近いのは、村上春樹さん版だと思います。とても綺麗で絶妙な訳、すごいな、と思います。
小学校中学年前後から、自分でじっくり楽しむ本として紹介したい一冊です。
*p26-p27の状況がよく分からずに調べたところ、「ディズポーザー」という、日本ではあまり見ない装置のことでした。
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悪夢の再現
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投稿日:2020/09/01 |
怖い夢の中。
走っても走っても、全然前に進めず、追いかけてくる怖い「何か」に捕まりそうになる。
怖くて、怖くて、叫び声を上げたいのに、ふりしぼっても、ふりしぼっても声が出ない。
そういう、怖い夢が絵本になったような作品だと思いました。
真夜中。ぼくはともだちにさそわれて、ゆうれいのまちにいきます。そこでゆうれいたちにつかまって、ずっとくらして、おとなになって、再び現れたともだちのさそいにのって、いえをぬけだして、それから…。
言葉だけならば、明るい物語とも受け止めてしまいそうな恒川さんの文章と、大畑さんのベタリと不安になる絵が奏でる不協和音が、見事。不気味で不快な傑作だと思います。
傑作ですが…大人であっても、好みは分かれると思います。
小さな子どもには、おすすめしないです。悪夢は、目が覚めれば終わりますが、本から受けた印象は、ずっと心に残るので。
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絵も、数字も、美しいです。
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投稿日:2020/08/31 |
むかし、ある村で、王様がお米を独り占めしてしまいます。
そこで、むらむすめのラーニは一計を案じます。
王様の家来が落としたお米を届けたご褒美として、「今日は1つぶのお米を下さい。そして、30日の間、前の日の倍のお米を下さい」と王様にお願いしたのです。
軽い気持ちで引き受けた王様ですが、27日目ごろから心配になり、30日目には…?
日本では、一休さんや彦一さん、そろりしんざえもんさんなどで知られるお話が、インド細密画を取り入れた挿絵とともに繰り広げられるのですが…。
とにかく、絵の美しさに魅了されます。
金や朱を用いた、鮮やかな色彩。
とても細い線で描かれた、幾何学てきな模様と人物。
そして、数とインド細密画との、相性の良さ。
後半の、見開きのページは圧巻です。
子ども達は、細かく描かれた動物がお気に入りのようでした。
最後のページの数字を音読してみるのも、頭の体操みたいで楽しいです。
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大人のための危うい絵本。
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投稿日:2020/08/30 |
怪談えほんシリーズの2作目。
自分にだけみえる弟、ナイナイを見つけた少女マイマイは、ナイナイをくるみの殻にいれて花を摘みに行く。
そこから始まる、不条理な世界は、ただただ…そう…気持ちが悪いです。
宇野亞喜良さんが描くマイマイは蠱惑的で、少女にも、成熟した女性にも見え、降りかかる「怖いはず」の出来事を抵抗なく受け入れるようです。とても「危うい」です。
何度か読んでみましたが、この本を子どもに紹介する理由がどうしても思いつかず、☆1つにしました。
大人は、☆1か☆5かで、好みと評価の分かれるところだと思います。
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おもしろいものは、おもしろい。
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投稿日:2020/08/29 |
読み聞かせでも、子どもが自分で読んでも、とにかくおもしろい絵本です。
まず、文章が秀逸。
台詞も、地の文も、テンポがよくて、分かりやすい。
次は?次は?と、物語にぐいぐい引き込まれます。
そして、絵がいいです。
ご隠居さんも、おばけも、ユーモラスで人間味たっぷりに描かれています。
場面のメリハリもよくて、小さな子どもたちが釘付けになります。
読み聞かせの最中は大笑い。終わったあと、しばらく、「スーッと戸がひらき〜?」と、盛り上がっていました。
絵本ならではのオチも最高です。
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子どもも大人も「うらやましい!!」
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投稿日:2020/08/28 |
工場見学とチョコレート。
子ども達が(多分、大人も)、大好きなのではないでしょうか。
きいろいぼうしのおじさんとのドライブの途中に立ち寄ったチョコレート工場。
おじさんが直売店で買物をしている間に、ジョージは好奇心のおもむくまま、工場の中に入っていきます。
工場には、ワクワクするようなチョコレート製造機があって、次々にチョコレートを作り出しています。これまた好奇心のおもむくまま、機械をのぞきこんだジョージがおこした騒動とは…?
愛くるしいジョージと、どれもこれもおいしそうなチョコレートの絵は、いくら眺めていても飽きません。
おさるのジョージシリーズの中でも、特におすすめの一冊です。
読む前に、手元に小さなチョコレートを用意しておくと、よいと思います。
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怪談の王道
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投稿日:2020/08/27 |
古い家。
梁がむきだしの天井は高くて暗い、闇。
そこには何が見える?
いるの…いないの…?
簡単な、短い文章のリズムよい連なりが、期待と怖さをかきたてます。
見えないからこそ、怖い。
脳の中で自分だけの怖い何かを、見る。
落語の面白さに通じていると思いました。
最初は「聴く」だけで、このお話の怖さを味わって、次に、町田尚子さんの、饒舌な挿絵とともに怖さ楽しむ事を、おすすめしたいです。さらに、空想と怖さが広がります。
就学前の子ども達への読み聞かせは…ちょっと厳しいかもしれません。怖いので。
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大人が読むなら☆五つ
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投稿日:2020/08/26 |
初めて読んだとき、なんと禍々しい…と絶句しました。
小さな子どもたちの目に触れないように、棚の上に隠したのをおぼえています。
ページを開くごとに、血痕を思わせるシミ、瞳孔の開いたぬいぐるみ、カラス、木から吊されたおもちゃ…恐怖の原風景が広がり、本が生臭く匂うようです。
心の闇をさらけ出させようとする内容は、怪談というより、ホラー。
この本の怖さ、エンターテイメントとしての面白さを味わえるのは、ある程度経験を積んでからだと思います。
よくぞ、この本を作ったな…と思わせる、一冊です。
*よしたけしんすけさんの『ころべばいいのに』とあわせて読むと、おもしろいと思います。
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心にずっと持ち続けたい町。
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投稿日:2020/08/25 |
主人公のリナは、冒険物語のヒロインタイプではありません。
少しぽっちゃりしていて、まじめで、恐らく、学校の勉強も運動も、ちょうど真ん中、平均点をとっていそうです。
そもそも、不思議な「霧の谷」を目指したのも、お父さんに勧められたから。
そんな身近なリナと一緒に、ゆっくり、ゆっくり、物語に引き込まれます。
おそらく宮城県のどこかに入り口がある「霧の谷」は(挿絵をご覧下さい)、とにかく素敵です。
出てくる物も、人も、奇想天外で盛りだくさん。
誰もが、自分も、他人も、さりげなく大切にしています。
ふわりと浮かんだような、どこにもなさそうだけれど、ありそうな、懐かしくて優しい町。
子ども達には、こんな町を心に持ち続けてもらいたいな、と思います。
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