心ときめく時間の、その後に。『まよなかのゆうえんち』 【NEXTプラチナブック】

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」（2023年2月選定）から、ご紹介する一冊はこちら！

人間たちが楽しそうに遊ぶ、にぎやかな移動遊園地。やがて、静まりかえった真夜中にやってきたのは……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『まよなかのゆうえんち』。文字のないまま進んでいくこの絵本、どんな内容なのでしょう？

心ときめく時間の、その後に。『まよなかのゆうえんち』

守衛さんがカギを閉めた後、暗やみの中にうっすらと浮かびあがるのは、森の動物たちのシルエット。彼らは、この見知らぬ遊園地を視察にきたのでしょうか。そう思っていると、アライグマが網をかじって入口を作り、慣れた様子で電源を入れ、メリーゴーランドがまわりだし、あっという間ににぎやかな「真夜中の遊園地」に！ 

緊張感のあるうしろ姿からは想像もできないほど、思い思いにアトラクションを楽しむ動物たち。ポップコーンやアイスを食べながら、輪投げをし、ティーカップを満喫。楽しむ我が子を見守っていたり、ジェットコースターに乗り込み緊張していたり、その姿は人間の様子と何ら変わらないのです。

ケイト・グリーナウェイ賞の中でも、子どもたちの投票によって決められるシャドワーズ・チョイス・アワード2022を受賞したこの絵本。人間たちの様に無邪気に遊園地を楽しむ姿と、時折見せる野生の動物たちの緊張感あるシルエット、さらに夢を夢で終わらせない彼ららしい行動まで。そのギャップに驚かされながらも、においや音を感じられるような臨場感のある構成や、美しく心ときめく情景にすっかり心を奪われてしまうのです。

多くを語らない動物たちの、その表情や行動、そして佇まいから。子どもたちは何を感じとるのでしょうか。どんな物語を見出していくのでしょうか。とても重厚で濃密な一冊です。

編集長のおすすめポイントは……

磯崎 園子（いそざき そのこ）

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』（ほるぷ出版）、『ママの心に寄りそう絵本たち』（自由国民社）、監修に『父母＆保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母＆保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』（玄光社）がある。