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絵本紹介
2023.09.21
だんだんと沈みゆく太陽。すべてのものを金色に染め、夕焼けは喜びも悲しみも包み込んでいく。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『ゆうやけにとけていく』。今、注目を集める絵本作家、ザ・キャビンカンパニーの新境地。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
広い空の中で、だんだんと沈みゆく太陽。すべてのものを金色に染め、空気がひんやりとし、遠くで優しい音がする。
田んぼで、プールの中で、公園のジャングルジムで、買い物帰りにおかあさんと一緒に、部屋の中ひとりで。どんな子のところにも、そこここで生きる全ての人のところに、夕焼けはやってくる。
今日は一日何があったのかな。誰かと笑いあっていたのかな、それともひとりで静かに過ごしたのかな。楽しいことも、くやしいことも、悲しい涙やギラギラした汗までも。夕焼けがすべてを包みこみ、とけていく。そうしてやってくるのが、この静かな夜の空……。
一日が終わっていく前のほんのひととき。ページをめくるたびに時間は少しずつ過ぎていき、目に飛びこんでくるのは、初めて見るような、どこかで体験したことがあるような、美しくも懐かしい場面の数々。
誕生の春、夏の入道雲、肌寒くなってきて、雪が積もる冬。一日と一年と人の一生が、自分の記憶と誰かの記憶が、過去と今と未来が、オレンジ色の光の中にまざりあい、自分の中の「何か」も、画面の中に一緒にとけこんでいくようです。
強く鮮やかな色彩、力強い輪郭線、幻想的な雰囲気を演出する構図。けれど、眺めていると、不思議と心が落ち着いてくるのです。手がけられたのは、今最も注目を集める絵本作家、ザ・キャビンカンパニー。コロナ禍がはじまった頃に手がけられたというこの絵本の中で、彼らは最後につぶやいてくれます。
「ゆっくり おやすみ。」
みんなの感情によりそって
誰かが笑っている時も、怒っている時も、ふと顔をあげた時や、涙が出ている時も。いつも画面のどこかにいてくれる「おひさま」。その顔をじっくりよく見てみると、ほんのり微笑んでいたり、一緒にふくれっつらをしていたり。さまざまな表情をしていることに気が付きます。自らも沈みながら、そうやって、みんなの感情によりそってくれているのでしょうか。読んでいるだけで、心がおだやかになっていく。この絵本には、そのためのしかけが沢山散りばめられているようです。
この書籍を作った人
阿部健太朗(1989-)と吉岡紗希(1988-)による二人組の絵本作家/美術家。ともに大分県生まれ。大分県由布市の廃校をアトリエにして、絵本・立体造形・アニメーションなど様々な作品を生み出し、国内外で発表している。主な著書に「ゆうやけにとけていく」(小学館)「がっこうにまにあわない」「しんごうきピコリ」(共にあかね書房)「だいおういかの いかたろう」(鈴木出版)など。主な受賞歴に「第28回日本絵本賞」「第20回日本絵本賞読者賞」など。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。