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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  【第2回】「ももんちゃんと あそぼう」シリーズ編集者 童心社・永牟田律子さんインタビュー

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とよたかずひこさん絵本づくり40年 記念連載

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絵本作家・とよたかずひこさんの絵本づくり40年を記念した連載、2回目からはとよたかずひこさんとお仕事をされている編集者の方にご登場いただきます。今回は「ももんちゃん あそぼう」シリーズや「おいしいともだち」シリーズ、「たのしい いちにち」シリーズなどの赤ちゃん絵本だけでなく、とよたさんの紙芝居も出版している童心社の永牟田律子さんです。永牟田さんは「おいしいともだち」シリーズをゼロから立ち上げ、童心社のとよたさんの絵本と紙芝居の編集を一手に手掛けています。とよたさんの魅力、作品づくりの秘密についてお話をうかがいました。

この人にインタビューしました

永牟田律子

永牟田律子 (ながむたりつこ)

大学卒業後、童心社に入社。子どものころ、今も愛されるロングセラー絵本「14ひきのシリーズ」や『おしいれのぼうけん』に読者として出会う。入社後、その作者であるいわむらかずおさんや田畑精一さんの作品に編集者として関わり、多くのことを学ぶ。編集部で20年以上絵本と紙芝居の編集に携わり、現在、童心社副編集長。

「ももんちゃん」との出会いは、入社1年目の企画会議でした

───永牟田さんは、とよたさんに直接お会いするよりも先に、まだ刊行される前の「ももんちゃん」に出会ったそうですね。

そうなんです。それも入社した年に! 現在25作刊行されている「ももんちゃん」シリーズの最初の2作『どんどこ ももんちゃん』と『ももんちゃん どすこーい』の企画を前担当者の先輩が編集会議でプレゼンしたときのことです。
おむつをはいて、橋をわたり、くまをたおし、どんどこ進んでいくももんちゃん。エネルギーあふれる新しい赤ちゃん絵本に、会議がもりあがったことを覚えています。
のちに担当になるとは夢にも思っていませんでしたが、刊行が決まった瞬間に立ち会えたことは、ももんちゃんとのふしぎなご縁だと思っています。

───それから、担当編集者になるまでの間に、とよたさんとお話しする機会はあったのですか?

とよたさんとはその後、紙芝居の会などでごあいさつすることはありましたが、しっかりお話しできたのは10作目『ゆーらり ももんちゃん』の編集を引き継ぎ、担当になってからです。

───すでに10作目が出るほどの人気シリーズを引き継ぐことに、プレッシャーはなかったのですか?

実は担当を誰かが引き継ぐことになったとき、自分から「やりたいです!」と手をあげたんです。そのときは、わくわくする気持ちでいっぱいでした。今考えるとのんき過ぎるのですが。

「ももんちゃん」は刊行当時から、いろいろ話題になりました。例えば、ももんちゃんの友だち――さぼてんさんと、きんぎょさん。
当時、赤ちゃん絵本にサボテンが出てくることは、とっぴなことのように捉えられました。「赤ちゃんには、サボテンはわからないのではないか」と。 でも、とよたさんは、赤ちゃんが見たことがあるかどうかとか、そういうことは一切気にしていなかったんですね。「小さい人たちはこれからたくさんの友だちに出会っていくのだし、五感でいろんなことを感じているんだから」って。
実際、「うちの子はまだサボテンを知らないはずなのに、絵本をさわって『いたっ!』っていうんです」というお話をうかがったことがあります。歩く大きな金魚の友だちの登場も、みなさんを驚かせました。

───今では「ももんちゃん」にかかせない、さぼてんさんときんぎょさんに、そんなドラマがあったなんて驚きです。

シリーズの表紙が全部ピンク色というのも、はじめは社内で反対意見が出るくらい斬新なことでした。とよたさんはその後「ももんちゃん」の新しい仲間が増えて、一緒に並んだときのことまで考えていらっしゃったんですね。“ももんちゃんピンク”は、書店さんでも、おうちの棚でも、赤ちゃんにすぐ見つけてもらえる目印になりました。

そういう型にとらわれない、のびのびとしたとよたさんの世界をずっとおもしろいと思っていて、それで、先ほどのご質問に戻りますが、シリーズを引き継ぐときにはプレッシャーよりも「一緒にお仕事させていただきたい!」という気持ちのほうが強かったと思います。

ときにはスリリングな瞬間も!? 刊行までにはドラマがあります

───担当になって、とよたさんの絵本づくりに対する思いを感じたり、打ち合わせでのご自身の意識が変わったことなどありますか?

企画の打ち合わせは、今でもやっぱり緊張します。とよたさんはあらゆることを考えつくした上で、私に試作を見せてくださいます。絵本のページをめくったときの展開、声に出したときの言葉のリズム、何より作品として新しいおもしろさがあるかなど。
私がその場の思いつきで何かお話ししても、それはすでに検討済み、ということもしばしばあります。ですから、感じたことについてよくよく考え、私も覚悟を持って自分の言葉でお伝えしなければならないと思います。でも、それがとても難しく、試作を見せていただいているときから頭の中がぐるぐるしています。とよたさんは前ぶれもなく、ほかの打ち合わせのときにとつぜん試作を読んでくださることもあるので、毎回スリリングなのです! もちろん新しい世界に胸がおどり、「心が持っていかれました!」と、一瞬にして緊張がふきとぶこともありますし、シビアなお話ばかりしているわけではないのですが。

───永牟田さんが担当になってから出版された作品で、特に印象に残っている絵本はありますか?

1作1作、刊行までにはそれぞれドラマがあるのですが……。『ないしょないしょの ももんちゃん』の制作を進めているときに、“ないしょ”ってなんだろう、ということについて、とよたさんと長い時間話し合ったことが印象に残っています。「このおはなしの“ないしょ”は、誰にも言っちゃいけない秘密じゃなくて、大好きな人に教えたい、むしろ聞いてもらいたい“ないしょ”だよね」って。息子が小さなころ、耳が見えるように私の髪をよけて、ないしょ話をしてくれたときのくすぐったい感覚がよみがえりました。絵本の中で、ないしょ話をきいているみんながどんな表情をしているか、ぜひ注目していただきたいです。

  • ないしょないしょの ももんちゃん

    出版社からの内容紹介

    ももんちゃんから始まった「ないしょのおはなし」が、うさぎさん、ぶたさん、きりんさん、ぞうさんに、つぎつぎ伝わっていきます。「ないしょないしょ……」と耳もとで言われると、みんなにこにこ。どうやらお話はももんちゃんのことみたいです……。

    ぴょんぴょん、ぶーぶー、ぱっかぱっか、のっしのっし。
    楽しい音といっしょに、子どもたちが大好きな動物のおともだちが出てきます。

    言葉を伝えるときのまっすぐな気持ちと、ないしょ話をきいているときのわくわくしてくすぐったい気持ちがあたたかな絵から伝わってくる一冊。
    絵本を読み終わったあと、「ないしょないしょごっこ」をして、あそびたくなりますよ。

    人気の「ももんちゃん あそぼう」シリーズ23作目。

「ももんちゃん あそぼう」シリーズ

紙芝居『おむすびくん』が、絵本『おにぎりくんがね‥』に変身!

───「おいしいともだち」シリーズは、永牟田さんが編集担当になってからスタートしたとうかがいました。食べもののキャラクターの可愛さに心をつかまれてしまいます。どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

とよたさんは、もともと料理は得意じゃないし、食べものの作品は難しいと思うとおっしゃっていたのですが、あるとき、紙芝居の企画として『おむすびくん』を見せてくださったんです。それがとてもおもしろくて! 白いおむすびが自分で口をあけてうめぼしをおなかに入れたり、自分でのりを巻いちゃうなんて、普通思いつかないですよね。
それで、身近な素材ですし、絵本にも向いているのではないかとお話ししました。

───紙芝居から絵本になることもあるんですね。

絵本と紙芝居では、違うところがたくさんあります。真ん中でとじられているか、いないか。ページを「めくる」と、画面を「ぬく」の違い。絵に文字がのるか、のらないか、などなど。形が違うだけでなく、そこからうまれる特徴も違います。そのため、絵本にするなら、絵も展開も言葉も絵本として考え直す必要があり、そうそううまくいくことではありません。
とよたさんは、お話ししたときに「そうか」とおっしゃってくださいましたが、それからしばらく時間がたちました。そしてまた前ぶれもなく、電話がかかってきたのです。「食べものの絵本、できたよ」って。そのとき私のおなかには赤ちゃんがいて、とよたさんは私の体を気遣い、わざわざ童心社まで足を運んでくださいました。そして、編集のみんなに『おにぎりくんがね‥』と『たまごさんがね‥』の試作本を読んでくださったんです。その場で「おもしろい!」といっせいに声があがり、ほぼ企画が決定しました。

───おはなしの中でどんなトラブルがあっても、「しんぱい ごむよう!」とキャラクターが言うセリフはとても安心感があり、力強さを感じます。

「しんぱい ごむよう!」という言葉は、紙芝居『おむすびくん』にはなく、絵本として考えているときに自然と出てきたそうです。子どもたちは普段使わない言葉でも、ひびきがおもしろかったり、使い方が気にいったりすると、すぐまねしますよね。小さな子が片手を前に出して「しんぱい ごむよう!」のまねをするという言葉を多くいただき、手あそびまでできました。毎巻その決めゼリフを出すと決めたとよたさんもすごいと思います。
とよたさんは、赤ちゃん絵本は大人に読んでもらうものだから、大人にも楽しんでもらえるおはなしにしたいと常日頃おっしゃっているのですが、この「しんぱい ごむよう!」という言葉に励まされたというお母さんやお父さんのご感想も多く届いています。ちなみに私は、『おもちさんがね‥』の「しんぱい ごむよう!」が好きです。

はじめて企画を見せていただいたときにお腹にいた「おいしいともだち」シリーズと同い年の息子も、もう15歳です。

「おいしいともだち」手あそび

「おいしいともだち」シリーズ

───小さな子どもたちに身近なまくらやリュック、おちゃわんを主人公にした「たのしい いちにち」シリーズに出てくるキャラクターたちも、とっても元気ですね。

赤ちゃんが、はいはいで一直線に自分の布団に向かっていく姿や、自分のタオルをにぎりしめている姿を見ると、身近なものって、子どもたちにとって“友だち”なんだなあと思います。食べもののほうがとりあげられやすいですし、リュックやいすは地味かもしれないけれど、でもやっぱり、子どもが毎日を共にする大事な友だちです。そんな身近なものたちを主人公にしたのがこのシリーズです。
とよたさんが描くキャラクターは、泣いちゃったり、友だちに助けてもらうこともあるけれど、「自分はできるんだ!」という力強さも持っています。このシリーズのタイトルがすべて『はぶらしくんです。』のように、自分のことを堂々と宣言する形になっているところにも、そんな力強さが表れています。

「たのしい いちにち」シリーズ

互いに演じあい、議論をかさねて……紙芝居ができあがるまで

───童心社さんは、とよたさんの絵本だけでなく、紙芝居もたくさん刊行されていますね。

とよたさんは紙芝居の試作も、ちゃんと演じてみせてくださいます。先ほどお話ししたように、絵本と紙芝居にはそれぞれ特徴があるのですが、とよたさんはそれを熟知なさっていて、いつも紙芝居ならではの表現を意識してくださっています。普段からご自身でも紙芝居を演じていらっしゃるので、打ち合わせしていても、紙芝居を演じたり、観たりしているときの感覚を共有しながら、お話しできていると感じます。
でも、紙芝居はちょっとした「ぬき」や言葉で伝わり方が変わりますので、8場面の作品をめぐって何時間も演じ合いながら議論することもあります。 あるとき、『にょろ にょろり』という作品について、「このたこが出てくるところは……」「でも、このたこのおもしろいとこはさ……」と、まじめに話し続けていたことがありました。そして何時間かたったとき、急にとよたさんが「おれたちはいったい何の話をしてるんだ?」と笑いだし、私も吹きだしてしまいました。

  • 紙芝居 にょろ にょろり

    出版社からの内容紹介

    にょろにょろり、とでてきたタコが、「おれはだれだ?」ってきいてるよ。みんなで大きな声でいってみよう。そしたらタコが、む、む、む、む、む…「みんな、おれのかおに、かお、ちかづけてこられるか?」だって。どうしたのかな?
    画面をぬくとタコのスミがとんでくる意外な展開にびっくり!想像を広げ、ユーモアたっぷりのタコとのやりとりを楽しむ、参加型紙しばい。最後につくってくれる食べ物はもちろん……?!?!
    大人気、とよたかずひこ作品。おはなし会で、園で、図書館で、盛り上がること間違いなし!

───笑いも交えつつ、徹底的に考えて紙芝居も絵本も生み出されていることがすごくよく分かります。永牟田さんがおすすめのとよたさんの紙芝居を教えてもらえますか?

とよたさんの紙芝居1作目『でんしゃがくるよ』は、独特の「間」と、画面をぬいたときに子どもたちがはっとする展開で、ロングセラーになっています。
紙芝居唯一の賞である五山賞を受賞した『ぞうさんきかんしゃ ぽっぽっぽっ』もおすすめです。

出会った人みんなが大好きになる! とよたかずひこさんってこんな人です

───とよたさんとの打ち合わせは、アトリエにうかがって行うことが多いのでしょうか。

はい。とよたさんが何十年もアトリエにしているマンションは、屋上から行き交う電車が見えるほど駅の近くにあります。うす暗いマンションの廊下を通って小さなエレベーターに乗り、インターホンを押すと、「はーい!」と、明るいとよたさんの声が聞こえます。
いつも小さな丸テーブルをはさんでお話しするのですが、うしろの窓からはとよたさんの絵本によく登場するカラスの声や、電車が走る音が聞こえます。本棚をよーく見ると、本と棚の間に試作本らしきものが見えたり、絵を描くスペースのうしろの壁に見たことのない表紙のイメージ画が貼ってあったりするので、こっそりチェックしています。
分厚い時刻表があるのも、とよたさんのお部屋ならではかもしれません。とよたさんは携帯やパソコンをお使いにならないので、電車の時間を時刻表で確認していらっしゃいます。調べたい地域のページを見つける早さは、それは見事です。

───永牟田さんからご覧になって、とよたさんはどんな方ですか。

とよたさんは、文字通り、わけへだてなく、出会ったひとりひとりに興味を持ち、大切にしてくださる方です。例えば書店さんでのフェア用看板ができると、「販売部では、誰が担当してくれてるの?」「これは広告宣伝グループの誰がつくってくれたの?」と聞いてくださいます。総務や別の部署の人の名前も覚えてくださっていて、会ったときには「○○さん、いつもありがとうね」と声をかけてくださるのです。子どもたちはもちろんのこと、出会った書店の方、図書館司書の方、印刷会社の方、みなさんに対して変わらずそうなのです。その記憶力に驚くと同時に、こんな方、めったにいらっしゃらないと思います。出会った方がみんな、とよたさんのことを好きになり、また会いたいと思うのもうなずけます。

とよたさんは私の人生の大先輩ですが、いつも対等に、一緒に絵本に向き合うひとりの人間としてお話ししてくださいます。それもありがたいことです。

───これからまだまだ、とよたさんとの絵本づくりは進んでいくことと思います。今後のシリーズの新刊、紙芝居の刊行予定について、教えていただけますでしょうか。

来年3月には『とんとん ももんちゃん』を刊行予定です。寝かしつけるときの“とんとん”ではなく、「安心して」「だいじょうぶだよ」の“とんとん”です。私もラフを見ながら癒されています。
9月には「おいしいともだち」のちょっと変わった新刊『しぶがきくんがね‥』が刊行予定。どんな「しんぱい ごむよう!」が出てくるか、楽しみにしていてください。
紙芝居は「2024年度 定期刊行かみしばい」5月号として『いたいの いたいの とんでいけ〜』を予定しています。タコさんとイカさんがどうなってしまうのか!? こちらも小さな子たちから楽しめます。

───最後になりますが、とよたかずひこさん絵本づくり40年に対するメッセージをお願いします。

とよたさん、絵本づくり40年、おめでとうございます。そのうちの15年をともに歩ませていただけたことは、私にとって本当に幸せなことです。とよたさんが「まだ描きたい世界がある」「まだ描いていない世界がある」とおっしゃるたび、わくわくしています。これからどんな世界を絵本や紙芝居で見せてくださるのか、心から楽しみにしています。これからもよろしくお願いします!

とよたかずひこさん絵本づくり40年 記念動画公開中

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