絵本紹介
2024.09.30
「よかったなあ」は魔法の言葉。あたりまえの「こと」や「もの」が輝きだす……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『よかったなあ』。100年を見つめてきた詩人まど・みちおさんからの贈りもの、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
画面いっぱい、生き生きと豊かに存在している草や木。目のさめるような鮮やかさで生い茂る葉っぱ。そして、誰もかれもがため息をつくような美しさで咲きほこる花。それらすべてに対して、詩人まど・みちおさんがなげかける言葉は「よかったなあ」……。
「よかったなあ」
ぼくらのまわりにいてくれて。みんな違っていてくれて。どんなところにもいてくれて。鳥や動物や人、何が訪ねるのをでも動かないで待っていてくれて。
それらまどさんの発する言葉ひとつひとつと響きあい、あたりまえのようにそこに「ある」自然や動物たちをまぶしいくらいに輝かせてくれているのは、日本とアラスカを行き来しながら作品を制作している画家あずみ虫さんの絵。大胆ながら愛くるしさを感じるシルエット、筆の勢いを感じる瑞々しい絵の具の色、アルミ板を使った立体感のある独特な技法は一度見たら忘れられないほど魅力的なのです。
没後10年を記念して刊行が続く「まど・みちおの絵本」シリーズの一冊として誕生したこの絵本。絵本を閉じてもまだ浮かんでくるのは、愛おしさとかけがえのなさに満ち溢れる世界と「よかったなあ」の言葉の響き。その余韻をまどさんからの贈りものとして受け取っていこうと思うのです。
「よかったなあ」とつぶやいてみる
私たちが生活する中で、すぐそばにあるもの、いてくれるもの、あたりまえだと思っている「もの」や「こと」って何だろう。朝起きた時に挨拶をする相手かもしれないし、ご飯を食べることかもしれない。何気ない友達との会話や窓から見える景色なのかもしれない。ふと思い出した時に「よかったなあ」とつぶやいてみる。それだけで、なんだか今日もいい一日が過ごせるような気がしてきます。
この書籍を作った人
1909年山口県に生まれる。詩人。25歳ごろから創作をはじめ、北原白秋に詩・童謡を学ぶ。戦後約10年間幼児雑誌の編集に携わったあと、詩作に専念。代表作に「ぞうさん」「おさるがふねをかきました」「やぎさん ゆうびん」「一ねんせいになったら」など多数。著書・『てんぷらぴりぴり』(大日本図書)、『まめつぶうた』『しゃっくりうた』『まど・みちお全詩集』『うめぼしリモコン』『ぞうのミミカキ』(理論書)『それから……』(童話屋)など多数。1994年、日本人初の「国際アンデルセン賞作家賞」を受賞。
この書籍を作った人
1975年神奈川県生まれ。絵本作家、イラストレーター。安西水丸氏に師事。アルミ板をカッティングする技法で作品を制作する。2010年講談社出版文化さしえ賞受賞。絵本『わたしのこねこ』(福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。写真家・星野道夫氏への憧れと野生動物への関心から、2018年よりアラスカに通い始め、現在はアラスカと日本を行き来しながら、作品を制作している。絵本作品に『ぴたっ!』『いもむしってね…』(福音館書店)『つるかめ つるかめ』(あすなろ書房)『わたしがテピンギー』(偕成社)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。