そこにゾウがいることを知っていたのは、少年だけ。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『ぼくのひみつのともだち』。ケイト・グリーナウェイ賞作家が描く壮大な物語絵本、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
都会の街なかにある、だれも知らない小さな森。気に留める人もなく、まるでぽっかりとあいた穴のよう。けれど、奥へ入っていけば立派な木が何本もある。
すぐ隣に住む少年は、毎朝窓から森をのぞきこんだ後、支度をすると歩いて学校へと向かう。行きも帰りも、学校でもひとり。長い一日が終わると、少年は森の中の友達に会いに行く。
そこにゾウがいることを知っているのは少年だけ。手で触れ、話しかけ、一緒に遊ぶ。彼にとっては特別な場所なのだ。
ところがある日、森の木の幹に大きなばってんがつけられていた。この場所がとうとう売りに出されたのだ。
「ぞうは どうなるの?」
大事な友達を守りたい一心で森の中へ向かった少年の目の前で、奇跡が起き……。
学校が終わり家に帰れば、すぐ隣の森へと向かう少年。一つ一つの木々に声をかけながら、ゾウのそばで一緒に過ごす。やがて秋がきて、冬になり、そしてまた春がきた時も。そして少年はゾウに問いかける。
「きみは どうするの?」
ケイト・グリーナウェイ賞受賞画家フレヤ・ブラックウッドの新作絵本。目で追っていくだけで見えてくるストーリー、じっくり味わうことで浮かび上がってくる様々な状況や感情。少年と、森の中に存在する動物たちの関係がどれほど大切なものだったのだろうか。最後の信じられない光景に、熱い思いがわきあがってくる。
映像の仕事をしていた作者らしい、まさに「絵を読む」絵本。想像力を働かせながら、この壮大な物語の世界に浸ってみてください。
じっくりと思いを巡らせて
添えられている言葉は必要最低限。けれど絵が多くの物語を伝えてくれます。学校へ向かう少年の姿、帰ってきた時の家の中の様子、森へと差し込む日差しの量など、そこに漂う感情や空気感、かけがえのない日常までもが見えてくるようです。この奇跡の光景はいったい何を意味しているのでしょう。すぐに答えを導きだすのではなく、さまざまな場面や表情にじっくりと思いを巡らせていく。そんな時間もまた絵本の楽しみ方の一つですよね。
この書籍を作った人
1975年、スコットランド生まれ。オーストラリアで育つ。映画の特殊効果の仕事などを経て、2002年より本格的な創作活動を始める。マーガレット・ワイルド文『さよならをいえるまで』(岩崎書店)で、ケイト・グリーナウェイ賞を受賞。そのほかの作品に、リビー・グリーソン文『みて、ほんだよ!』(光村教育図書)、メム・フォックス文『ほしのこども』(岩波書店)、椎名かおる文『ぼくのひみつのともだち』(あすなろ書房)など。
©Ivy Hawker
この書籍を作った人
訳書に、アントワネット・ポーティス作『まって』(日本絵本賞翻訳絵本賞)、ペトル・ホラチェック作『こぐまのともだちはどこ?』(ともに、あすなろ書房)など。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。