穴に指をいれて、ぷっくり〜ぽっこり! 新感覚のあかちゃん絵本!
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絵本紹介
2021.12.16
ある晴れた日、愛犬マイルズは飛行機に乗りこみ……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『パイロットマイルズ』。2019年に亡くなったジョン・バーニンガムへのお別れの本でもあるというこの1冊。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
2019年に亡くなったジョン・バーニンガムの未完の構想をもとに、妻のヘレン・オクセンバリーと旧友のビル・サラマンが描きあげた愛犬マイルズの物語。前作『ドライバ―マイルズ』で自由気ままに車で走り回った犬のマイルズは、今回、飛行機を手に入れ、ふたたび自由に空をとびまわる。だけど、その姿にはある決意のまなざしが見てとれる。
ところどころに挟みこまれる、バーニンガムの描いた印象的な絵。その間を埋めるように、つながるように、丁寧にオクセンバリーの絵が物語を語っていく。マイルズの決意はバーニンガムの決意と重なっているようにも思え。また、それを見送るノーマンの後ろ姿は、オクセンバリー、そして私たち読者の目線と重なっていくのです。
大切な家族との別れ。でもそれは決して後ろ向きなことばかりではなく、残された人の心を救ってくれることだってある。愛犬マイルズを主人公にしたこの絵本は、ふたりの作家を愛する全ての読者の心を揺さぶってくるのです。谷川俊太郎の日本語訳が心に響きます。
さよなら、マイルズ
前作『ドライバーマイルズ』で無邪気に車を運転してたマイルズだけれど、今作ではしっかりと歳をとっている。同時に前作では全てがバーニンガムの絵だったけれど、今作では3場面だけになっている。けれどそれは悲しいだけではなく、マイルズがいかに家族に愛されていたのか、バーニンガムの世界をいかにまわりの人が理解していたのか、しっかりと伝わってくる。こんな風に世界を飛び立つことが出来たなら……バーニンガムは、いつまでも私たちの憧れの作家でいてくれるようですね。
この書籍を作った人
1936年イギリスのサリー州に生まれる。若いころは、兵役を拒否し、さまざまな仕事をしながら世界中をまわった。その後、ロンドンにある美術学校に通いながらイラストの勉強をし、ポスターなどを描いていたが、はじめて手がけた絵本『ボルカはねなしガチョウのぼうけん』でケイト・グリーナウェイ賞を受賞、絵本作家として鮮烈にデビューした。その後『ガンピーさんのふなあそび』で再度受賞し、この賞を2度受賞したはじめてのイラストレーターとなる。『ガンピーさんのドライブ』『おじいちゃん』『ねんころりん』『旅するベッド』『エドワルド せかいでいちばんおぞましいおとこのこ』など多数の作品を発表しており、いま、世界で最も注目されている絵本作家のひとり。夫人は著名な絵本作家であるヘレン・オクセンバリー。
この書籍を作った人
1938年、イギリスのサフォーク州生まれ。夫のジョン・バーニンガムの影響で絵本や挿絵の仕事をはじめる。『3びきのかわいいオオカミ』『トムとヒッポがほんをよむ』(リブロポート)、『しごと』『あそび』『したく』『ともだち』『かぞく』(以上、文化出版局)などの作品がある。
この書籍を作った人
バーニンガム&オクセンバリー夫妻の古くからの友人で数十年にわたる彼らの活躍と成功をともに喜んできた。ケンブリッジ大学を卒業後、音楽家、学校の教師、大学の講師などさまざまな分野で活動している。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。