英国の映像作家デレク・ジャーマンが最期に選んだ場所――ダンジネスの浜。 1994年にエイズで亡くなった彼は、ドーバー海峡沿いにあるダンジネスの浜に終の棲み家を築きました。彼はそこで、浜に流れ着いた空き瓶や打ち捨てられた鉄屑などをつかって「庭」をつくったのです。その庭――砂地の上に点在する数々のオブジェは、やがて滅びゆくすべてのものたちへのオマージュのように、風雨に晒されながら今も遺っています。そして、訪れる者たちに何ごとかを囁きつづけています。 彼が亡くなった直後、日本のいくつかの雑誌でも彼の特集が組まれました。HIV感染と同性愛への偏見に満ちた世界にあって、彼は映像というアートをつかってそれらを覆すかのごとく話題作を次々と製作していったからでした。そうした雑誌の特集記事を目にした著者がこの地を訪れたのは、2001年秋のことです。「この浜があっての彼の庭だったのだ」と、その荒涼とした浜辺の風景を見て思ったといいます。そして、2002年に再び訪れた著者は、断片的に思い浮かぶイメージを描きつけていきました。そんなふうにして庭を描いた25枚のイラストに、そのときに感じたイメージをのちに言葉としてつけていったものが本書です。 和紙のような紙に、絵の具だけではなく、ガーゼや糸をつかってイメージを表現したイラストは、「イラストレーション界にとっての快作」と、その世界では第一人者といえる宇野亜喜良氏によって絶賛されています(本書「まえがき」より)。著者自身の不思議な精神世界を表す文章とあいまって、ページをめくるたびに見るひとをあたたかな場所に誘ってくれる、そんな素敵な本になったと思います。ほっと一息つきたいときに手に、取っていただきたい本です。
英国の映像作家デレク・ジャーマンにインスパイアされた「絵本」です。
出会いと別れという、夏の日の恋をジャーマンの思い出の場所と重ね合わせて、さまざまな心の動き、思いを詩と絵によって、ひとつの空間にまとめあげています。
繊細な心の吐露に、読者として共鳴し心揺さぶられる作品ではありますが、ちょっと感傷的になってしまいました。
絵の所々で現れる点線は、時空をつなぎとめる鉄線なのでしょうか。
脆さをつなぎとめる思いの線なのでしょうか。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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