西表島に旅行に来た「ぼく」は、知り合いの先生に、まるで水中から生えているように広がるマングローブ林を見せてもらいました。
潮が引くとその独特な形の根っこが姿を現します。 でも、どうして海のなかでも育つのでしょうか? その謎を先生が教えてくれます。
引潮になると、干潟にはカニや、鳥、貝、ハゼなどたくさんの生き物が姿を現します! 干潟は「デトリタス」といい、植物の落ち葉や、動物の死骸や排泄物が細かくバラバラになったもので出来ています。 このデトリタスとマングローブは切っても切れない豊かな生態系を生み出しています。
そして満潮になると、マングローブ林は海の生物たちのオアシスに。 独特な形の根っこは、巨大な迷路になり、塩分の弱い汽水域には、この場所にだけ住める小魚や、幼魚たちが身を潜めます。
最終章では、マングローブが私たちにとって、どれだけ大事な植物かを教えてくれ、マングローブを上手に利用する取り組みなども紹介されています。
マングローブ林が伐採されたり、ゴミが打ち寄せる海岸の写真は衝撃的です。
マングローブにこんなにも種類があるなんて知りませんでした! どの種類も、根っこ、種、花の形もみんなそれぞれで、南国の植物らしくダイナミック! 丁寧な写真で詳しく紹介されています。 西表島では日本に生息する全種類をみる事ができるそうです。
普段、馴染みのない植物ですが、実は地球に暮す私達みんなにとって、なくてはならない植物なのです。 自然を保護する大切さを「マングローブ」という木を通してみて行くと分かりやすく、自然と共存し、持続可能な社会や環境を作っていくには何をすべきか、子どもたちと一緒に考えるきっかけになる本です!
(福田亜紀子 元絵本編集者)
「マングローブ」とは、熱帯・亜熱帯の地域の河口など、満潮で海水が入る場所に生える木のこと。この本では、主人公の小学生が、西表島にすむ研究者といっしょに島の干潟やマングローブ林を探検・体験するという設定で島のマングローブの生態系を知り、そのあと、さらに世界のマングローブ林の破壊や植林の現状についてもくわしく学ぶ、写真図鑑です。 地球上のマングローブ林は、都市の近代化による開発や、アブラヤシの栽培、エビの養殖のために伐採され、すでに半減しましたが、それは、二酸化炭素の増加による地球温暖化や、海岸や河岸の土砂流失という、重大な環境破壊の原因の一つとなり、今、アジア各国では、マングローブの植林が始まっています。 マングローブ林の減少の問題は、養殖エビをよく食べるわれわれ日本人や、地球上にくらす人類全体に関わる問題として、小学校高学年の社会科の教科書でも取り上げられ、日本の子どもたちの知るところになりました。新聞やテレビなどのマスコミでも、マングローブが取りあげられる機会が増えています。 潮の干満で、陸になったり、川や海になったりするマングローブには、その環境のちがいに依存して生きるさまざまな生き物たちがいます。「命のゆりかご」などともよばれるマングローブの生態系を学ぶことで、未来をになう子どもたちが、生き物と環境の関係の重要性を知り、地球の環境に対する知識や自然をいつくしむ心を学ぶことができます。
|