『おとうさんの庭』『カラス笛を吹いた日』『マッチ箱日記』など、人間ドラマを感じさせる精緻な絵を描く、バグラム・イバトゥーリンの絵を味わえる作品。 海辺の石や砂が、島の明るい光を反射するような、独特の薄い色彩であざやかに描かれます。
トーマスという男の子が、おばあちゃんの島の家で夏を過ごす間、海ガラスに魅了され、集めていきます。 海に落ちたガラスが、波や砂にもまれて、とがったところが丸くなった……海ガラス。 トーマスが海ガラスをひとつ拾い、枕元において寝るたびに、海ガラスのカケラから過去が浮かび上がってきます。 大きな軍艦の進水式や、嵐にあった船で粉々になった瓶。 そして夏は終わり……いつしかずっと時が経ったのち、ある海辺で、再び海ガラスはトーマスのもとに過去を運んできてくれるのです。
子どもが夏に出会う、発見や驚き。そして海が時をつないでいく不思議さが、本書には一瞬のような永遠のような輝きとともに、閉じ込められています。 読んだあと、身近で拾ったものたちに「これはどんな旅をしてきたんだろう」と思いを馳せたくなるはず。 小学生の中・高学年向け、夏の読書におすすめしたい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
おばあちゃんの島の家で夏を過ごしていたトーマスはある朝、海岸で海ガラスを見つけた。海水や砂にもまれ、時を経て、丸くなった海ガラス。「おじいちゃんは、海ガラスにはひとつひとつに物語があるってよく言っていたわね」とおばあちゃんは言う。この海ガラスは、どこから流れてきたのだろう。どんな旅をしてきたのだろう。どんな物語があるのだろう。 その夜、海ガラスを枕元に置いて寝たトーマスは、嵐のなかを進む帆船の夢を見た―― 小さな海ガラスからひろがる、壮大な物語。
海辺で見つける波に洗われて丸みをおびたガラスたち。
それぞれにいろんな物語を持っているのだと、感慨深く思いました。
トーマスが海ガラスを見つけたシーンと、海ガラスが語る思い出のシーン交錯が、とても味わい深く描かれています。
そしてトーマスが歳をとり、孫のアニーに海ガラスの話をするまでの年月が絵本の奥から別の物語を語っているように思いました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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