淡路島に生まれ育ったたひろしは、戦争で父を失う。戦争が終わった年の冬、親せきに食べ物を運ぶため、淡路島と明石をつなぐせきれい丸に乗った。しかし、定員の3倍の乗客を乗せた船はあっけなく沈没してしまう。同じ船に乗っていた親友のりゅうたの父親に偶然助けられたが、りゅうたは助からなかった。ひろしは、漁師であるりゅうたの家族を手伝い始め、漁を通じて淡路島の海と向き合う中で、生きることへの力強い思いをとりもどしていく… 淡路島を舞台に命を描き続ける絵本作家、田島征彦の最新作!
実際にあった出来事をベースにしているので、せきれい丸の無謀な出港を軽く見ることは出来ません。
定員をはるかに越えた乗船客は、終戦直後の混乱と、生きるために必死だった社会で、ある意味必然だったのかもしれません。
物語の中で描かれている、りゅうちゃんとひろしの親友関係は、死んだ者と生き残った者との象徴として描かれています。
りゅうちゃんを助けあげたと思った父親が、人違いだと解ったときの失望はいかほどでしょうか。
そのお陰で生存できたひろしの、りゅうちゃんに対するやましさはいかほどでしょうか。
しかし、そんなことも包み込んで、実際の生活が営まれていくのです。
たくましく生きていこうとするひろしの決意が、眩しく描かれていました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
|