イギリスのロンドンは今、真夜中の12時の1分前。ほとんどの人が眠る時間だけど、「地球のほかの場所では、なにがおきているんだろう?」と気になって眠れない2人の子は、真夜中を知らせる時計の鐘の音とともに、手をつないでベッドから窓の外に飛び出しましたよ。「ねえ、わたしたちといっしょに、地球のいろいろなところを見にいかない?」
日付は4月21日。ロンドン深夜0時は、北極圏は午前1時。太陽が沈まない春の白夜で、ホッキョクグマのお母さんが獲物をつかまえようとしている。一方、インドの海岸は午前5時30分。夜明け前にウミガメのあかちゃんが海をめざしている。中国では6時30分、朝日のさしこむ森でテナガザルが歌い出す……。
22日を迎えるまでの丸一日、2人の子は地球をぐるっと巡り旅をします。この日付には意味があり、4月22日は『地球の日(アースデイ)』と呼ばれ、1970年のアメリカからはじまり、地球環境について考える日として世界に広がった日なのです。
地球の各地点の生き物たちをリレーする、ひとつながりの文を書いたのは、イギリス・ケンブリッジ大学で動物を研究するニコラ・デイビスさん。子ども向けの本を執筆し、映像メディアBBCで野生動物や自然をテーマにした番組のプロデュースにも関わってきた人物で、日本でも『ちいさなちいさな めにみえない びせいぶつの せかい』(ゴブリン書房)や『生きものはみんなちがっておもしろい』(化学同人)など多数の絵本が翻訳されています。
絵を描いたのはイギリスのイラストレーター、ジェニ・デズモンド。命に覆われた地球のダイナミックさと、生き物への繊細な愛情が伝わってきます。ホッキョクグマは、氷が溶けて獲物がとりづらくなっているかもしれない。テナガザルは木の伐採で生息地が狭まり、だから山のてっぺんで歌うしかないのかもしれない。オーストラリアのカンガルーは、山火事で水飲み場が減る中で移動しているのかもしれない……。
子どもたちひとりひとりのペースで、地球についてじっくり考えたり想像したりする1冊に、ぴったり。大きな生き物から小さな生き物まで、それぞれの生態系の中で暮らす描写は、私たち人間を地球の同じ生き物として公平な気持ちにしてくれます。地球上の野生動物たち、それぞれの危機について、想像力が広がっていく大判絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
今、地球のほかの場所では、なにがおきているんだろう? 地球をぐるっとまわって、今この時間に、世界で何がおきているのか、見てみよう!
氷がとけてえものがとりづらくなっている北極のホッキョクグマ、木を切られ山の一部だけでくらす中国のテナガザル、山火事で水のみ場がへっているオーストラリアのカンガルー…… このしゅんかんにも、地球の環境の変化により、たくさんの動物たちに危機がせまっています。 地球について知ること、考えること。それが、地球上のすべての生きもの、そして「たったひとつの地球」をまもる一歩になります。
細かいところまでとてもていねいに描かれた絵。
その美しさにひかれて、環境問題のことを書いていることを忘れていました。
最初から戻って文章を中心に読むと、それぞれの場所でどんな問題が起きているのかがかかれているとわかっていきました。
なので、この本を子どもに薦めるなら、「今世界が大変だ」とか「環境問題が?」とかは言わずに、ただ「絵がきれいだよ。見てごらん」と渡して、絵の美しさを味わわせてから、「実は世界でこんなことが起きているんだよ」と、子どもと一緒に1か所ずつ説明を読んでいくといいのではないでしょうか。 (よし99さん 50代・その他の方 )
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