「おとなりのフィリスさんに 、ひときれもっていってあげて」
グレースは、お母さんが焼いたケーキを持って、隣の家のフィリスさんを訪ねます。
「おやまあ、あなた、どなた?」
フィリスさんは、グレースを台所に招き、一緒にお話をします。ある日はシチュー、またある日はグレースが自分で焼いたクッキーを持ってフィリスさんを訪ねます。その度にフィリスさんはグレースに聞きます。
「あなた、なんて子?」
ある日、フィリスさんはコートを着込み、スーツケースを用意し、息子のデニスが迎えにくるのを待っていました。長い旅行に行くと言うのです……。
少女と、隣に暮らすおばあさんとの、さりげない、でも確かな友情を描くこの絵本。グレースが訪れるたびにフィリスさんの老いは進んでいきます。ふたりは記憶を積みかさねていくことはできません。それでも、グレースはフィリスさんのもとを訪れます。それはきっと、グレースさんのことをが好きだから。フィリスさんもグレースが来ると嬉しそうに微笑みます。
ふたりで過ごす時間を、そして交わしていく会話を丁寧に描くことにより、認知症について子どもたちが理解することを助けてくれるだけでなく、「人の魅力は、歳をとっても、記憶をなくしかけていても、失われることはない」ということを伝えてくれます。そしてそのことは、様々な立場の読者をしっかりと励ましてくれるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ある日、グレースは おかあさんが焼いたケーキを一切れ、 おとなりのフィリスさんに もっていきました──
少女と、記憶をなくしかけたおばあさんとの、 さりげない、でも、たしかな友情を描いた一冊。
海外の書評より 共感とユーモア、認知症が引きおこす症状へのあたたかな理解、そしてウェルビーの想像力に富んだ繊細なイラストレーションによって、この絵本は美しく、幼い子どもたちが認知症にふれるのに理想的な一冊となっている。━━ Lancashire Evening Post 紙 この絵本は、認知症の実際の様子について、子どもたちが理解するのを助け、話しあうよいきっかけになるだろう。だが、それだけではない。これは人と人との物語、ふたりの人間の結びつきの物語でもある。━━ Books for Keeps 誌
認知症の進行を臨場感をもって描いた絵本です。
読んでいて、考えさせられてしまいました。
認知症のフィリスさんは一人暮らしのようですが、その生活の危うさにはハラハラドキドキさせられてしまいました。
人の名前を思い出せないことは別にしても、時間の感覚が失われ、傷んだ食べ物にも無頓着です。
どうなっていくのだろうと思っている時に、フィリスさんは施設に入所するのことになりました。
生活的には安心できましたが、フィリスさんの症状は加速度的に悪くなり、自分のこともわからなくなってしまいました。
いつ何時自分がそうならないとも限らない恐怖を感じました。
この絵本では、穏やかにお話を終えていますが、問題提起された自分には、絵本のお話のその先が気になった仕方ありません。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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