一九四〇年六月のある朝,H.A.レイとその妻マーガレットはドイツの軍隊が攻めてくる数時間前にパリを脱出した.それも自分で組み立てた自転車に乗って! わずかな荷物のなかにあったジョージの原画が絵本になるのは,翌年アメリカでのこと.ふたりの生い立ちや奇跡の逃避行を,日記や写真,イラストをまじえてたどる.
「おさるのジョージ」で有名なレイ夫妻の、生い立ち〜人生の終わりまでを、絵本の形で紹介したドキュメント作品。
第二次世界大戦をはさみ、ドイツ生まれの二人は、様々な場所を転々とし、子どものための本を作り続けます。ナチスドイツから攻撃を受けていた当時のフランスから、間一髪で逃げ延びたり、二人の人生自体が大冒険でした。
特に戦争中の様子を、丁寧に描いた文章と明るいタッチの絵は、わかりやすいが深く心に残ります。、ジョージの絵本のように親しみやすい絵で表現されているから見ていられますが、戦争はもっと残酷な場面もたくさんあったはずです。その辺を想像しながら、夫婦の画家としての軌跡を追いかけ、読者も一緒に戦争をくぐりぬける体験ができる作品です。
読解力と、第二次世界大戦についての簡単な歴史背景の知識があれば、誰でも読んでみて欲しい作品です。適宜にルビもついています。子どもよりも、むしろ大人の方が読むと、より深くひびくものがあるはず。
愉快な作品の裏側には、決して愉快ではない部分がありました。こんな大変な経験をしつつも、明るさを失わなかった二人の偉大な作家に、改めて敬意を表します。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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